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「狂乱物価」が来るか?物価上昇・インフレで、止まらない「現金価値」の低下
2024年7月19日掲載
「狂乱物価」、憶えている人も少なくなったかもしれません。昭和48年の後半(1973)、オイルショックという言葉とともに物価が上昇。そしてティッシュやトイレットペーパーがなくなるという噂が流れ、スーパーや小売店に客が殺到し大行列となり買占め騒動も起きました。この時トイレットペーパーの価格は1.5倍になり、店によっては3~4倍の価格でも売り切れたといいます。
原因は、田中角栄内閣の日本列島改造計画による地価の高騰、金融緩和に第4次中東戦争による「石油危機」の原油価格高騰が加わり、急激なインフレが発生しました。この時は消費者物価指数(CPI)が、1973年で11.7%、1974年で23.2%も上昇しました。
日本の景気はこの時をピークに下降、翌1974年に第2次世界大戦後初めてのマイナス成長となり、スタグフレーションに突入したと言われています。
低下する「現金価値」
そして現在、デフレからインフレへの転換後、物価の上昇は続いています。
適度な物価上昇・インフレは、賃金上昇を伴えば好景気に繋がり歓迎。その実現が中央銀行(日銀)の本来の目的です。しかしインフレは「現金価値」を下げることになります。
現在の長引く円安で、輸入品や輸入材料を使う製品を中心に価格は上昇。
不動産は、都心(地方でも中心部)マンションの平均価格が1億円を超え、高級ホテルの宿泊費は昨年比25%近く上昇。食料品も一部のものは高騰しています。
因みにハイパーインフレの定義は「前月比で50%以上」の物価上昇を差し、国際会計基準では「3年間で累積のインフレ率が100%以上」とのこと。
「ハイパーインフレ」までは考えられないですが、あの「狂乱物価」が再現される可能性がないとは言いきれません。例えば、もし中東に何らかのアクシデントが起これば、ありえることです。
上昇した価格は下がらない
一度上昇した価格帯は中々下がることはありません。もちろん浸透し始めたダイナミックプライシングで、需要が下がれば価格も下げる「コントロール」を行える分野もあります。またテクノロジーの進歩やコモディティ化で、価格帯が一気に下がる分野もありますが、一般には高止まります。また一様な価格の下落は、今度はデフレを引きおこす要因になります。
ガラパゴスになる日本
海外に出れば、日本人にとって現地の価格は「狂乱物価」のように感じるでしょう。
最近の欧米での物価上昇率は10%に近く、円建てでの価格は単純計算で1.5倍に、モノによっては倍に感じます。
ビジネスでワールドワイドに活動、海外で過ごすことが多い人は、より「円」の価値の低下を実感することになります。
それを避けるには「国内にいて海外に行かなければいい」のが得策ですが、これは恐ろしいことで、「日本が世界から取り残される=ガラパゴス」となってしまいます。
買いまくる外国人・ついていけない日本人
その逆の現象が日本のインバウンドです。外国人にとって日本はあらゆる物が安く買える国になっています。外国人は日本に次々と訪れ、モノの購入だけでなく、土地や不動産まで取得しています。ホテルは「外国人と一部の日本人・富裕層用」と「日本人用」に二極化。外国人の需要が多いモノ・サービスの価格は高騰し、円で収入を得る「日本人」にとってある分野では「狂乱物価」に近い状況が発生しています。
この流れをくい止めるのには、「円高への転換」が第一ですが、それには日銀・政府の対応が必要。しかし「現金価値の低減」による「資産減少」を防ぐのに私たちが自分で出来る対策もあります。
「資産減少」を防ぐ対策
この状況下、現預金の価値は日に日に減っていきます。
「現金価値」の低減=「資産減少」を防ぐには、現預金を下記の形に変えて保有することが対策です。
1.株式・投資信託
2.外貨預金・外国債券
3.不動産
4.金・エネルギーなど実物資産
繰り返しですが、インフレ下では現金の価値は日に日に低減していきます。
「資産減少」のリスクを抑えるには、昔から言われている「財産3分法」ならぬ「財産4分法」が有効です。また、この4つに資産を分散・保有することで、リスクを消すことができます。
1973年の秋の「狂乱物価」。筆者も新規オープンするスーパーに、開店前から「トイレットペーパー」を求めて並んだことを具体的に思い出しました。オープンと同時に売り場を目指して走りだす人たち。今では考えられない光景です。