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顔認証システム実用化への壮大な実験が開始!

2024年6月28日掲載

gt20240628_image01.jpg「顔認証システム」の実用化が始まっています。
すでにその利用シーンは多岐になります。

身近なところでは、スマートフォンの顔認証。ここ数年で採用機種が増え始め、顔認証によるロックの解除や決済も可能になっています。また既に東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、空港では成田空港の出入国手続き、他にもコンサートなどのチケットの転売抑止策としての導入が進んでいます。

『顔認証』とは、画像・映像から人の顔を判断する技術。その処理は、画像・映像から、まず「顔の位置」を探し、「目、鼻、口」などの位置、「顔の領域比率」など、様々な要素について照合し「人物」を瞬時に識別するものです。その方法には、画像だけを取り込む「2D顔認証システム」と、赤外線カメラを併せて顔全体を立体的に識別する「3D認証システム」があります。

今までの顔認証システムの多くは、カメラで撮った映像を解析する「2D認証」でしたが、最近では「3D認証」が増加。本体に内蔵されている撮影用のカメラ以外に、近接センサーや照度センサー、またドットプロジェクターなどで、それぞれの顔の特徴を立体的にスキャンして識別します。「2D認証」では「本人写真」で認証ができてしまう可能性がありましたが「3D認証」ではその心配はなくなります。

また最新では『AI(ディープラーニング)』を活用した「画像認識ソリューション」も出てきています。

誤認の確率は、搭載の技術にもよりますが、約100万分の1と言われ、指紋認証と比べると10倍の高精度になります。

高度なセキュリティと圧倒的な利便性

この「顔認証システム」、急速に実用化が進み始めました。

まず6月15日に千葉県佐倉市の鉄道「山万ユーカリが丘線」で、顔認証で乗降できるシステムが全国で初めて、交通機関に本格導入されました。

そして、来年「2025年関西万博」をきっかけに、この顔認証は一機に広まっていきそうです。

NECは、関西万博に「顔認証システム」を導入すると発表。入場時や会場内の店舗の決済に使用するとのこと。対象は「通期パス」「夏パス」というチケットの購入者で、会場の51カ所の入場ゲートにシステムを設置。チケット記載のQRコードと、顔認証で追加確認を行います。これにより、セキュリティ強化はもちろん、チケットの貸借などによる「なりすまし防止」が図れます。登録者数は、NECの国内の事例では最大の120万IDを想定しています。

また、会場内の店舗では、「通期パス・夏パス」の購入者と電子マネー「ミャクペ!」の利用者を対象に「顔認証決済サービス」を提供。三井住友カードの決済端末が約1,000台設置され、どの店舗でも顔認証に対応するとのことで、両手がふさがっていても「顔パス」が使え、財布を取り出したり、スマホアプリを立上げたりすることが不要になります。

また、この関西万博では、パナソニックコネクトが大林組とともに、夢洲会場の工事の管理に、すでに「顔認証システム」を導入しています。万博の工事は、複数の建設業者計約30,000人が工事に携わり、不審者の侵入を妨げるためにもセキュリティ対策は不可欠です。このシステムは、ヘルメット、マスク着用でも識別が可能、入退場の管理の効率化が図れています。

そして、同じく大阪の地下鉄「Osaka Metro」は『顔認証改札機』の設置を進め、2024年度末の利用開始を目指しているといいます。昨年末、Osaka Metroが「顔認証改札機・お客さまモニターを募集します」という広告を出しました。そして御堂筋線の梅田駅、本町駅、なんば駅の3駅に白い顔認証改札機を1レーンずつ設置し2024年3月1日(金)から6月30日(日)まで4か月間の実証実験を実施しています。

この「顔認証システム」の導入は、鉄道や各業種にとって大きなコストダウンに繋がります。鉄道の自動改札機は、聞くところによると1台700万円近くで、多機能なものになると1台1,000万円。紙の切符の詰まりなど、メンテナンスもコストもかかるとのことです。

キャッシュレス化に一層の拍車

一方で、JR東日本や東武鉄道など関東の鉄道8社は5月29日に、2026年度末以降、「近距離の磁気の切符」を廃止し、QRコード乗車券に置き換えると発表しましたが、おそらく定期券などは「顔認証システム」に移行するのも早いと考えます。

また現在キャッシュレスの王者となったSUICAやICOCA、manakaなどの交通系ICカード(FeliCa:ソニーが開発した非接触ICカード)は、世界的な半導体不足の影響により、カードの製造段階で必要なICチップの入手が困難になっていますが、「顔認証システム」の普及でこういったデバイスも不要になります。

「顔認証システムの導入」は、これまでの技術をもリーフフロッグで飛ばしてしまう画期的なものかもしれません。7月3日に渋沢栄一氏などが肖像画の新紙幣が発行されますが、その流通量・使用頻度は、キャッシュレス化に加え、この顔認証技術の進化でますます少なくなっていくでしょう。

「顔認証システム」は、まずはイベントや交通機関での採用が拡がり、オフィスやホテル、そして、今後はより厳密な認証が求められる、家の鍵や金融機関のパスワードに利用され、私たちが鍵やカードを持ち歩くこともなくなると考えます。

しかし、その高度な認識力により、社会に張り巡らされているカメラと連携、常に私たちはトレース・追跡されてしまうという、怖さも反対にはあります。顔情報の登録に抵抗を覚える、今の方式で十分なので顔認証は不要だ、といった声が高まる可能性もありますが、この進化は止まりそうもありません。

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