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大きく揺れるフランス。「たゆたえども沈まず」

2027年7月4日掲載

7月26日に開会式を迎える「パリ2024オリンピック」を目前に控え、フランスは今、政治の大きな波で揺れています。

6月上旬の欧州議会選挙で、極右政党「国民連合(RN)」に敗れたマクロン大統領は即座に国民議会(下院)を解散し選挙に打って出ました。この賭けが裏目で出てしまいそうです。

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フランスの国民議会選挙とは

フランスの国民議会選挙は下院が対象で定数577。投票は2回行なわれ、今回は6月30日に「初回投票」を実施。まずこの「初回投票」で、有効投票の50%以上かつ有権者数の1/4以上を獲得した候補者の当選が確定します。

当選が確定しなかった選挙区では、有権者数の12.5%以上得票の候補者のみで2回目の「決戦投票」が7月7日に行われます。(多くは上位2人。3人以上が決選に進む選挙区は「トリアンギュレール」と呼ばれ、通常は少ないですが今回は投票率が上がり増加しそうです) 

今回は577選挙区のうち「初回投票」で76人が確定。残りの501選挙区が「決選投票」となります。

初回投票の結果では、ルベン氏率いる極右政党「国民連合(RN)」が34%と最多の支持を獲得。左派の「新人民戦線(NPF)」が28%、マクロン大統領の支持会派・与党連合の「アンサンブル」(ENS)は約20%で3位になってしまいました。

この結果と出口調査による見通しでは、「国民連合(RN)」が230~280議席となり単独過半数に迫り、「新人民戦線(NPF)」が125~165議席。与党連合「アンサンブル」は70~100議席と改選前の250から大幅に議席を落とすのでは、と報道されています。

極右政党から首相誕生の見通し

「国民連合(RN)」が単独過半数や他の右派政党と連立した場合、マクロン大統領は「国民連合(RN)」から首相を指名せざるを得ず、フランス史上初の極右政党出身の首相の誕生となります。

しかし「国民連合(RN)」には、国政運営への不安があります。そのため彼らは、まずは安全で現実的な政権運営をするとみられ、EUとの衝突を避け、マクロン大統領が実行した「年金改革」の見直しする公約も急がないと思われ、極端な政策は封印すると思われます。

揺れるフランスの金融

ところが、このフランスの政治情勢への懸念がフランスの金融を大きく揺さぶっています。ユーロネクスト・パリの株価指数「CAC40指数」は、6月上旬から急落しはじめ、約6%下落し中型株はさらに下がっています。

またフランス国債への影響も大きく、利回りはポルトガル国債を逆転。ドイツ国債との「利回り格差(スプレッド)」が欧州債務危機の水準まで広がり、フランスとドイツの10年物の借入コストのスプレッドも0.8%まで拡大しました。

すべては7月7日の結果次第、議席数が確定してから明らかになります。

前述のとおり「国民連合(RN)」が大勝したとしても、イタリアのメローニ氏のような現実的な政権運営となれば、この差(スプレッド)が解消する期待もあります。

また、選挙結果のインパクトと「パリ2024オリンピック」の反動で、株価がもう一押しする可能性はありますが、フランスがそのまま低迷することは考えづらいのも事実です。

オリンピックで「パリの熱い夏」は想像していましたが、その前に大きな波がパリを飲み込もうとしています。

しかし、『たゆたえども沈まず』16世紀から存在する「パリ市の紋章」に刻まれたパリのスローガンです。

「どんなに強い風が吹いても、揺れるだけで沈みはしない」というこの言葉が、

まさに今のフランスに当てはまるものと考えます。

「たゆたえども沈まず」です。

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