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2025年「金利のある世界」に

2024年12月30日掲載

2024年3月に日本は2016年から8年間続いたマイナス金利政策から脱却し、そして7月末に0.25%の利上げとなり、ついに金利のある世界に戻りました。

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長引くデフレ、停滞した日本経済を打開するために、日銀は金融緩和・マイナス金利という一種異常な政策をとっていました。
しかし2024年2月22日、日経平均株価が1989年の大納会での最高値3万8915円を超え、4月の賃上げは、13年ぶりに5%を超える高水準となり、7月には日経平均が4万2000円を突破、景気の回復が見られる中、小さいですが金利のある世界に戻りました。そして2025年には0.5%になると予想されています。

現在銀行預金の金利は、都銀の普通預金は0.1%、3年の定期預が0.15%にとなり、併せて住宅ローン金利も上昇しています。中にはPayPay銀行のように、条件付きですが年2.0%と発表するところも出てきています。

金利のあったバブル期は「年利6%超」も

1980年代から90年代初めまで日本はバブル経済期、金利は高水準にありました。この時期、金融機関は様々な「高金利の商品」を提供、多くの国民が「貯蓄」に走りました。
通常の定期預金、郵便貯金、国債に加えて、高い金利設定の「ワリチョー」や「リッチョー」といった金融商品がありました。
まず「銀行定期預金」は80年代後半に10年以上の定期で年利5%以上、高い時に6%を超えることもありました。また郵便貯金の定額貯金や定期貯金も非常に高い金利が設定され、80年代後半には、定期郵便貯金の金利も5%を超え一部は最高年利8%を記録しました。これらは安全性も高く人気になりました。
同じく安全性が高い国債も、長期国債は6%前後の金利が提供されていました。

その他「ワリチョー」、や「リッチョー」という旧日本長期信用銀行が発行した長期信用債券、また日本興業銀行が発行していた割引金融債券「 ワリコー」も人気を集めました。
「ワリチョー」「ワリコー」は「割引債」と呼ばれるもので、割引価格で購入し満期時に額面金額を受け取るタイプの債券。利回りは非常に高く年利6%以上を提供するものもありました。
「リッチョー」は「利付債」と呼ばれるもので、定期的に利息を受け取り満期時に額面金額を受け取るタイプの債券で、年利7%を超えるものも存在しました。
その他、信託銀行の「BIC」は、預金者から集めた資金を企業などに長期的に貸し付けその収益を預金者の利益として配当する貸付信託で、バブル期には年8%程度の高利回りで人気を集め、信託銀行の個人向け運用商品の主力商品でした。

以上のように、高金利時代には「預金」だけで安定した利子収入を得ることができ、多くの家庭が将来のための貯蓄、資産形成を行っていました(金利が6%とすると単純に5,000万円の預金で年300万円の利子収入があったことになります)。それにより個人消費が支えられ経済の安定に寄与しました。
一方の金融機関は高金利で預金を集め、その預金で企業や不動産融資を実行、バブル経済を支える重要な役割を果たました。しかし1990年代始めにバブルが崩壊すると、多くは不良債権問題に直面、積極的に行った融資が回収できなくなり経営危機に陥ったのです。

忘れられていた「金利のある世界」

私たちがしばらく忘れていた「金利のある世界」への回帰、これは日本経済にとって重要な転換点になると考えます。

金利のある世界の魅力の一番は、1980年代のように預金者が安定した利子収入を得ることができることです。これは将来の消費や投資に繋がり経済の安定化を実現します。
そして金利の上昇は、インフレ抑制の効果もあります。借入コストが高くなることで、消費や投資が抑制され物価の上昇を防ぐことができます。さらに高金利は外国資本の流入を促し、通貨の価値を維持上昇させ円高傾向に持って行く効果があります。これにより輸出入のバランスが取れやすくなり貿易の安定にも寄与します。
一方デメリットは、住宅ローンや事業資金の借入コストが上がることで個人や企業の負担が増大、消費や投資が減少する可能性があります。
特に政府や企業が高額の債務を抱えている場合、金利上昇は財政健全性を脅かす要因となります。またデフレ傾向にある経済では、金利上昇が消費と投資をさらに抑制し景気の停滞やリセッションを引き起こす可能性もあります。

昨年は新NISAにより個人の「資産形成の意識」は飛躍的に向上、投資意欲が高まり海外のINDEX型投資信託などが高い人気を博しています。
今後、インフレの時代になり、あわせて金利が上昇していくと「金利のある商品」つまり「預金」「債券」も「安定的」という強みを活かし、有力な選択肢になっていくでしょう。
また「金利」を意識するようになると「外国債券」も選択肢に入ってきます。特に米国や新興国の債券は金利が高い傾向にあり高いリターンを得ることができ、それらをポートフォリオに組み込むことでリスクを分散できます。
しかし外国債券への投資は、魅力的な利回りが得られる反面多くのリスクも伴います。
為替リスクや信用不安などを十分に注意・考慮し慎重な選定が求められます。

過去の日本において「金利」は経済成長を支えました。
「金利のある時代」、輝かしい80年代後半を憶えている方もいらっしゃると思います。
以前はその「陽と陰」の両方が現れました。今回はその教訓を活かすことができるのか。
「2025年」は日本にとって重要な転換点になるのかもしれません。
皆様によいお年が訪れますよう心よりお祈り申し上げます。

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