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再生可能エネルギーの切り札になるか?期待される「洋上風力発電」

2024年12月20日掲載

12月17日に経済産業省から「第7次エネルギー基本計画」の原案が発表されました。
2040年の「電源構成比」を、再生可能エネルギーが4~5割、火力が3~4割、原子力を約2割とすることを目標としました。「再生可能エネルギー」を主力電源とし、その内訳は、太陽光が22~29%、水力を8~10%、風力4~8%、バイオマス5~6%、地熱1~2%の目標が置かれました

日本の「エネルギー自給率」は2020年度で11.3%、OECD38か国のうち37位(38位はルクセンブルグ)という低水準。発電のコストが資源国の動静や為替の影響を受け不安定な状態です。特に2011年の東日本大震災による「原子力発電所の停止」の影響により、海外から輸入される石油、石炭、天然ガス(LNG)など化石燃料への依存度はさらに高まりました。そして、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻でロシア産天然ガスのヨーロッパへの供給が制限され、現在でも世界中で天然ガスの価格が高騰しています。
それに追い打ちをかけるように円安が重り、現在日本では電気料金をはじめとしたエネルギー支出が増加、生活に大きな影響を与えています。
世界中が不安定な状況下、電力への国際情勢の影響を小さくするためにも「エネルギー自給率」を高めることは日本にとって喫緊の課題です。
また今後は、進化するAIを支えるデータセンターの増設、電気自動車EVへの移行と、電力需要が増大していくことは明らかです。

これらの課題を解決し、あわせて「カーボンニュートラル」も実現するのが「再生可能エネルギー」です。その中で期待されているのが「洋上風力発電」です。

洋上風力発電.jpg

「洋上風力発電」が期待される訳

まず「風力発電」は風という自然の力を利用して風車を回しその回転で発電するため、一定の風力があれば昼夜を問わず電力を生み出し、燃料を必要としません。
そして海上では陸よりも強く安定的な風が吹いています。四方を海に囲まれた日本にとって、大きなポテンシャルを持つ発電方式になります。

「洋上風力発電」には、風車の土台を直接海底に固定する「着床式」と、海面に浮かべた構造物の上に風車を置く「浮体式」の2つがあります。
海の上は、周囲に障害物がないことから陸上と比較して風の状態がよいこと、設備の大型化と大量導入ができコストの低減が可能になります。
また、経済波及効果も期待できます。設備には数万点の部品が使用され、これらの部品を日本国内で製造すれば他の産業に大きく貢献可能。併せて日々のメンテナンス業務が必要となり、裾野の広い成長分野になることが期待できます。
一方、海へ機器を設置するにあたり、海洋の生態系に影響を及ぼす懸念はありますが、風車の基礎部分が人工の漁礁となり様々な魚類が集まってくることもわかってきました。

「洋上風力発電」の現状

日本政府は2020年に「洋上風力産業ビジョン」を策定し「洋上風力発電」の設置を推進しています。現在では、秋田県4カ所、長崎県2カ所、千葉・新潟県でそれぞれ1カ所の計8カ所の海域で設置が進められています。また青森県沖、山形県沖では事業者の公募を行っています。

前述のとおり日本は四方を海に囲まれた海洋国家です。
世界銀行の試算では日本には地理的条件から550GWの「洋上風力発電」の可能性があると推測しています。
また日本風力発電協会では、現在の風力発電量は約5GWにとどまりますが、2050年までに陸上風力を40GW、洋上風力発電を140GWの計180GWの36倍まで増やすという目標を掲げています。この目標が実現すれば、風力発電は日本の電力需要の約3分の1を占めることになり、大きな期待をもつことができます。

今後激増していく電力消費、待ったなしの環境への配慮、日本を囲む「海」が、2つの大きな社会課題を解決するのかもしれません。

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