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岸田首相・退陣がもたらす変化。新しい日米のリーダーは誰に?

2024年8月16日掲載

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8月14日の11時少し前に岸田文雄首相(自民党総裁)が9月に予定される自民党総裁選に立候補しない意向を表明、11時30分から首相官邸で記者会見を行いました。

2023年末に発覚した「パーティー券の問題」に端を発した政治不信、自民党そして内閣への支持率の低迷が続く中、9月の総裁選に臨む可能性も考えられましたが、お盆休み中の退陣表明となりました。

このあと自民党総裁選は、8月20日に選挙日程が決定、9月20日から29日の間に投開票となります。新総裁・新首相が決定の後は2025年10月30日任期満了となる衆議院の解散がいつになるか、政治日程を見ながら新首相は難しいかじ取りが必要になります。

2024年動いた世界、クライマックスは11月5日

2024年は世界の各国で重要な選挙が相次ぐ「世界選挙イヤー」となりました。

昨年の中国に続きロシアのプーチン氏は盤石でしたが、台湾、インドネシアでは新たなトップを選出。ヨーロッパでは、6月に欧州連合(EU)の「欧州議会」選挙が実施され、極右政党が躍進。そして7月にフランス、イギリスと選挙が相次ぎました。

イギリスでは労働党が勝利。スターマー新首相のもと14年ぶりに労働党政権が発足。

フランスでは、下院の決戦投票の結果、勝利すると思われた極右政党「国民連合(RN)」が失速。結局、中道、左派どの陣営も単独過半数に届かない「ハングパーラメント(宙づり議会)」の状態となり、マクロン大統領は今後難しい政権運営となります。

またイランでは、5月にライシ大統領がヘリコプターの墜落事故で死亡したため、大統領選を6月28日に実施。米欧との協調を唱える穏健・改革派のペゼシュキアン元保健相が保守強硬派を破り当選しました。

そして、9月下旬に日本の新首相が決まり、クライマックスは11月5日・アメリカ大統領選挙となります。世界の政治の構図が大きく変化するかもしれない正念場となります。

岸田政権の3年間とは

退陣する岸田政権。実際の評価はどうでしょうか。

昨年末の「政治資金パーティー問題」を端緒として今年に入り自民党と政権に逆風が吹き始め、支持率は一気に低迷、報道では国民からの評価はおしなべて低迷、これを受けて今回の退陣となりました。

しかしこの原因は「政策の失敗」というより、自民党の政治と金の問題で「総裁としての指導力不足」への国民からの非難の方が大きいと感じます。

日米安全保障を一層強固に+「異次元の金融緩和」に幕

岸田政権は、2021年10月からの3年の任期の間に下記を実行しました。

「外交」では、念願だった「広島サミット」を成功させ、ゼレンスキー大統領も電撃的に出席。アメリカとの「安全保障」を確固たるものにして「経済安全保障」も実現、半導体のサプライチェーンを構築しています。

防衛の拡充も行い、防衛費をNATOと同じGDP比2%に、そして「次期戦闘機の共同開発」「防衛装備品の輸出拡大」など、現状の世界動向に則した現実的な対応を行っています。

「経済政策」では、成長と分配の好循環をめざす「新しい資本主義」を掲げ、1991年以来33年ぶりのとなる高水準の賃上げを実現。デフレからインフレへの転換を図り、異次元の金融緩和を改め17年振りに「金利ある世界」に戻しました。

また「貯蓄から投資へ」を唱え、「資産所得倍増プラン」として「NISAを拡充」、海外からの投資も促進、日経平均は34年ぶりに最高値を更新しています。また単発ですが減税も実施。最近では憲法改正の道筋もつけようとしていました。

上記のような経済・金融への具体的な政策をとれた背景には、岸田首相が「証券議連(証券市場育成等議員連盟)」の会長を務めていることもあると考えます。

振り返ると、コロナ禍の2021年秋から3年の間にこれだけの成果を、着々と実行・実現した首相は、これまではみられなかったように思います。淡々と政策を実行し成果を上げていく姿は、額に汗しているような風には見えず、成果の強調もありませんでした。開成高校出身というインテリジェンスにとっては、それ程難しいことではなかったのかもしれません。

足元の自民党のコンプライアンスには眼が届かなかったことが悔やまれますがこれについては、本来は「幹事長の仕事」のように思えます。

この後の日本のかじ取りを誰がしていくのか、候補には、小泉進次郎、小林鷹之、茂木敏充、河野太郎、高市早苗、加藤勝信などの名前が挙がっています。

経済・証券金融への理解が深く、外務大臣在任も長かった岸田氏の後任次第で、政治・外交、経済・景気動向が大きく変わる可能性があります。

アメリカのリーダーが誰になるかにもよりますが、日米の安全保障・経済安全保障に変化があるのか?世界の外交・防衛の枠組が大きな影響を受けます。

また次の日本のリーダーが、経済・金融政策に「理解があるか」「注力するか」により、日本の経済・マーケットに大きな変化をもたらす可能性があります。

今後、アメリカが9月に0.25%もしくは0.5%の利下げをする可能性が大きく以降11月・12月に追加の利下げも考えられています。また日銀の金融政策決定会合は年内あと3回。識者の間では年内の追加利上げはないという声が多いですが、年明けの1月か3月の利上げはありえます。

この時期に重なるように日本とアメリカの新しいリーダーが決まり新たな政策が始まります。

日本、アメリカにとどまらず世界の経済、政治・外交の方向性がどうなるのか、まずは9月末の自民党総裁選、そして今年のクライマックス11月5日。注目せずにはいられません。

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