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かつてないほど強固となった「日米2プラス2」進む防衛装備の相互協力

2024年8月9日掲載

先月7月28日、東京で「日米2プラス2」(日米安全保障協議委員会 外務・防衛担当閣僚協議)が開催されました。日本から上川陽子外務大臣、木原稔防衛大臣が、アメリカはブリンケン国務長官、オースティン国防長官が出席。ここ数年は年初の開催でしたが1年6か月ぶり、東京での開催は2021年以来となります。

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「日米2プラス2」とは、日本とアメリカの外交と防衛を担当する閣僚が2人ずつ参加して、安全保障についての協力体制などを議論するものです。

1960年の安全保障条約締結時から開催され、当初のアメリカのメンバーは、駐日米国大使と太平洋軍司令官。1990年の12月の会合から、アメリカのメンバーが国務長官と国防長官に格上げ。ただ開催地は当然アメリカで日本の外務大臣、防衛庁長官(2007年から防衛大臣に)が渡米するものでした。

が、2013年10月の「2+2」は東京開催で、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官が出席。岸田外務大臣及び小野寺防衛大臣と外務・防衛4閣僚が揃った日本で初めての「日米2プラス2」となりました。

今年2024年は、東京にブリンケン国務長官、オースティン国防長官を招いての開催となりました。

今年の「日米2プラス2」では特に下記が注目された点です。

より緊密となる「統合軍司令部」の創設と「拡大抑止」

在日アメリカ軍に新たに「統合軍司令部」を発足させる作業部会の設置することで一致。在日アメリカ軍の機能拡大を目指すことになります。このアメリカの「統合軍司令部」は、2024年度末に自衛隊が創設予定の自衛隊の「統合作戦司令部(JJOC)」のカウンターパートとなるもので、日米両軍の連携強化のために日本が求めていたものです。

現在、東京の横田基地の在日アメリカ軍司令部には指揮権はなく、指揮権を持つのはハワイ・ホノルルのインド太平洋軍司令部で、日本とは時差の問題もあります。

今後新たな両国の司令部が連携し、台湾有事や北朝鮮の動きを視野に入れた作戦計画を緊密に調整していくことになります。

また今回、「日米2プラス2」に続き「拡大抑止」に関する閣僚会合も初めて開催され、日本周辺で核の脅威が高まっているとして、アメリカの核を含む戦力で日本を守る体制強化を進めることで合意しました。

「拡大抑止」とは、「核兵器を含めたアメリカの戦力による抑止力を、同盟国の防衛にも適用する」ということです。対抗するものに対し「耐え難い打撃を与える能力がある」ことを示すことで向こうからの攻撃を抑止することを目指します。

今までは「日米拡大抑止協議(EDD)」(2010年設立)として、事務レベルの協議を定期的に行っていました。今回初めて「閣僚級」に格上げしたのは、アメリカが「核を含む戦力で日本を守る強い意志」を内外に発信するためとのことです。

オースティン国防長官は会議の冒頭「中国、ロシア、北朝鮮は核能力を増強し世界の安全保障の脅威となっている。よって拡大抑止は今までになく重要」と発言しました。

国産「パトリオット」の生産増強へ

そしてもう1点、今回の大きな注目点は「防衛装備・技術」の協力促進についてです。

まず、地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」の生産能力を拡大するために共同生産の強化、サプライチェーンの構築。またアメリカ軍の艦船や航空機の維持整備に注力するとしています。これは、アメリカの武器不足を補うことを想定して日本のサポート体制を構築するもので、日本が防衛協力で担う役割は一層大きくなります。

今回の協議は、6月の「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)の報告を踏まえたものです。

日米両政府は、6月9日に防衛装備品の協力を議論する「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)の初会合を防衛省で開き、①ミサイルの共同生産②米海軍艦船の日本での整備③サプライチェーンの強化、などの協議を行っていくことで合意しています。

このDICASは4月の岸田首相とバイデン大統領の日米首脳会談で新設を決めたもの。

防衛装備について今までの日米の協力関係は、日本がアメリカのミサイルや戦闘機を購入し、日本の防衛力を高めるものでした。しかしアメリカは現在、長引くウクライナへの軍事支援に加えイスラエルへの支援もあり「武器の在庫が不足」の状態になりつつあります。

エマニュエル駐日アメリカ大使は6月10日、「武器の備蓄がもとに戻るまで脅威は待ってくれない。そのために同盟国の力が必要」と語っています。

また日本の防衛省内には、台湾有事が起きた場合、自衛隊の弾薬・ミサイルが不足する可能性が高いと分析しています。

これらを踏まえ、今後は日米で互いにサプライチェーンを強化し、両国の防衛産業の協力体制の構築を急ぐ狙いがあります。つまり、日本がアメリカで不足する武器を補う仕組みをつくるということです。

ミサイルについてはアメリカ用の防空迎撃ミサイル「パトリオット」を日本企業が受注し、日本国内で共同生産する案が上がっています。日本がアメリカ企業からライセンスを得て生産するミサイルはパトリオットの他に、防空ミサイル「シースパロー」と「改良ホーク」があります。この2つのミサイルも今後共同生産の可能性があります。

日本は過去、長らく「武器輸出三原則」を堅持してきました。

が2014年4月1日に、武器輸出三原則に代わる新たな政府方針として『防衛装備移転三原則』が閣議決定されています。

この原則では、パトリオットのように他国企業の特許を使って国内でつくるライセンス生産品は特許を持つ国に移転は可能。しかし、日本から「防衛装備品」受け取った国が第三国に引き渡す際には日本の事前承認が必要となります。また現在交戦中の国や地域に送ることはできないことになっています。

"日米同盟 かつてないほど強固"

「日米2プラス2」の終了後の記者会見で、ブリンケン国務長官は「70年以上にわたり、日米同盟はインド太平洋における平和と安定の礎となっており、今やそれ以上のものになっている」と語り『日米同盟はかつてないほど強固』だと強調しました。

先述したよう当初「日米2プラス2」は、日本は大臣でアメリカは駐日米国大使と太平洋軍司令官で始まりました。その後、1990年に国務長官と国防長官の参加となりましたが開催地はアメリカでした。しかし、今回は現職の国務長官と国防長官が揃って来日しています。

ブリンケン国務長官の言葉があながち嘘でないことを物語っています。

日米安全保障の下、日本の防衛や航空、宇宙関連産業は経済面で大きな影響を受けることになります。

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