GLOBAL&TREND

【特別コラム】岸田首相の本気、「資産運用立国」・「資産運用の新時代」へ

2023年10月2日掲載

先週9月25日、東京・大手町の「経団連会館」で行われた『全国証券大会』に岸田文雄首相が出席し「資産運用立国」に取り組む強い意欲を示す講演をしました。

岸田首相は、「家計資産を預かり運用する役割を担う『資産運用業』の高度化が不可欠」と強調し「新たな資産運用」「貯蓄から投資へのシフト」をアピールしたとのことです。

現職の首相が『全国証券大会』に出席するのは実に29年ぶりで、エポックメイキングな出来事になりました。

「全国証券大会」とは、日本証券業協会、全国証券取引所協議会、投資信託協会の3団体が証券業界のこれからの方針・方策を発表する場で、毎年来賓として金融担当相、日銀総裁、経団連幹部が出席する重要な会。しかしこの会には安倍晋三元首相も出席はせず、今回の現職首相の出席は、「岸田首相の本気度」がわかるものと大きな注目を集めています。

「日本の株式市場に、風が吹いている」と考える3つ理由

年末に向かい、2024年以降、これからの日本の株式市場の行方がどうなるか様々な見方がありますが、最近の日本政府の動向をみると「追い風」が吹いていると考えます。その理由は、

①新NISAのスタート。国内2000兆円の家計金融資産が貯蓄から投資へシフト
②海外からの日本市場への投資が拡大する
③現政権の政策

の3つからです。

もともと岸田首相は、自民党の「証券市場育成等議員連盟」の会長で在任期間は長く、以前から「証券市場」の成長を提唱してきました。そして首相に就任するや「資産所得倍増プランの策定」や「少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充・恒久化」にいち早く着手、「貯蓄から投資へのシフトを大胆かつ抜本的に進める」と宣言しています。

そして、25日の『全国証券大会』出席直前の9月21日に、ニューヨークで投資家向けに講演を行い、日本政府が掲げる「資産運用立国の実現」に向けた具体的な方策を説明しました。

講演した「ニューヨーク経済クラブ」は1907年設立の伝統ある組織で、米国経済界のリーダーが集まるもので、日本の首相が話をするのは初の出来事です。

そこで日本の資産運用業について「遅れている構造改革の断行」を強調し、下記を約束しました。

①「資産運用特区創設」海外の運用会社の参入の促進
②「資産運用フォーラム」を立上げ日米の投資家の意見を政策に反映
③「日本企業のコーポレートガバナンス改革」の実効性の向上

この講演は非常に大きな注目を集めたとのことです。

また国内では『Japan Weeks(ジャパン・ウイークス)』も始まりました。これは9月25日から10月6日にかけて政府と金融業界が共同で開催。「海外の投資家・資産運用会社」を集中的に日本に招待し「資産運用立国への取り組み」を官民でアピール、日本への投資や新規参入につなげる目的のものです。これも初めて試みです。

以上のように、政府は「資産運用立国の実現」に向け強い意識で活発に動き始めました。

政府のこの姿勢が、日本の株式市場・マーケットの追い風になることはあっても逆風を吹かせることは考えにくく、「これからの日本の証券市場は『ゴールデンエイジ』を迎える」という意見もあります。

この数週間の岸田首相の動向をみると、この意見に反論は思い浮かびません。

GLOBAL&TRENDバックナンバー

世界がしのぎを削る「月の開発」

2025年問題と2025年の崖 山積する社会課題

既に始まっている 2024アメリカ大統領選挙

2024年問題 山積する社会課題

ピークチャイナは現実か?中国経済の状況

一覧に戻る