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2025年問題と2025年の崖 山積する社会課題

2023年8月28日掲載

202X問題」毎年迫りくる課題にどう立ち向かうか?

「202X問題」とは、その年に発生する、深刻な影響が起きる社会問題を指します。

この「202X問題」これからの数年、様々なものが控えています。

国や社会で解決しなければならない「課題」は目白押しですが、時期がわかっているため対応や準備は可能で、解決が「イノベーション」を産む機会にもなります。

前回は「2024年問題」、物流・運輸業界、建設業の労働力の不足についてでしたが、今回はその1年後の「2025年問題」を紹介します。

まず人口動態の変化が原因の社会課題「2025年問題」です。

「2025年問題」

現在注目されている「2025年問題」は、日本が「名実ともに(?)超高齢社会」に突入することで生じるさまざまな影響のこと指します。

2年後の2025年には、日本の総人口の18%が75歳以上の「後期高齢者」になると推測され「医療・介護の社会保障制度」や「労働人口」など、さまざまな分野に大きな影響を及ぼすと予想されています。

2025年、「団塊の世代」800万人全員が75歳以上の「後期高齢者」となります。

「団塊の世代」とは、第2次世界大戦の終戦後の1947(昭和22年)~1949年(昭和24年)の3年間に生まれた年代。今年74歳~76歳の方々で、2年後には、1949年生まれの人も75歳になります。その総数は「800万人」。「2020-2022年の合計出生数」が242万人ですので、この数字は衝撃的です。日本の高度成長を支えた「団塊の世代」が75歳以上になるという事実は「日本の高齢化」のシンボリックな出来事として捉えられ、この2025年が注目されているのです。

日本の総人口は2010年をピークに減少を続けています。2022年の出生数は77万人、初めて80万人を割りました。2025年には総人口1億2254万人、75歳以上の「後期高齢者」は2,180万人で総人口の18%、「65歳以上」は3,677万人で30%に達します。

つまり、国民の1/5近くが「後期高齢者」という超高齢化社会に突入します。日本の社会構造が大きな分岐点を迎え、医療費や介護費・社会保障費はいっきに増大、しかし社会保障を担う働く世代・労働人口は減少、この社会課題の解決への議論は国を挙げて行われていますが、その解は見つかっていません。

高齢化の推移

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出典:内閣府令和4年版高齢社会白書 第1章 高齢化の状況(第1 1)より

また、もう一方の社会課題は「労働力人口の減少」です。団塊の世代以下の1980年以降に就職した層が「65歳」を迎え、バブル期に就職をした世代が「60歳」に。この大きなボリュームの年代の退職・離職は、あらゆる産業の人材不足を招き、景気回復の腰を折りかねません。

もう1つの2025年問題、「2025年の崖」とは

企業のビジネスに目を向けると、「企業の情報システム=IT」にも大きな課題が待っています。「2025年の崖」です。

これは経済産業省が2018年発表した「DXレポート」に掲載された言葉で、要約すると「IT・情報システムの刷新を行わないと、2025年にその企業は転落してしまう」という内容です。

「DX・デジタルトランスフォーメーション」というかけ声のもと、多くの企業が「デジタル技術を活用した改革」を推進しています。

「DX」の主旨は「データやデジタル技術を活用し商品、サービス、ビジネスモデルの変革を促し競争力を高める」ということで、今後、企業が生き残っていくには「IT・デジタルの活用」は不可欠になります。

※「DX・デジタルトランスフォーメーション」の定義
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(経済産業省「DXレポート」より)

しかし、多くの企業の「IT・情報システム」は老朽化が進んでいます。

老朽化する「IT・情報システム」

IT・情報システムの導入・刷新には投資が必要で、多くの、主に中堅以下の企業では、業務上の必要性がなければ、なかなか既存のシステムを変えることはありません。

2000年以降に立ち上がった若い企業は別ですが、多くの企業で「IT・情報システム」の刷新が待ったなしです。

1995年の「Windows95」、その後の「インターネット」の普及、そしてPCサーバーを使ったシステムへリプレースという流れが2000年前後にありましたが、その時も、メインフレームやUNIXといったレガシーシステムを維持する企業は多く、システムの度重なる改良や増設を繰り返し、複雑化・ブラックボックス化した情報システムを使用している企業は少なくありません。

このような老朽化・複雑化したシステムでは、DXや環境の変化に対応できないため新システムへの移行が急務ですが、簡単ではなくコストもかかり、企業にとっては大きな課題です。

人材不足が進行

かといって、現行システムを使うにも、古いシステムの運用や保守をできる人材が高齢化で少なくなっているという問題もあります。レガシーシステム、メインフレームやUNIXで構成されたシステムの多くはCOBOLという言語のプログラムを使っています。この言語は若手のITエンジニアはなじみがうすく、現行システムへの対応ができる人材の不足が顕在化しています。

さらに、「IT人材」自体の不足も深刻です。DXの推進、データの活用、システムの刷新、セキュリティの強化など、企業や官公庁などのIT人材のニーズは強力です。

2030年には最大で70万人以上のIT人材が不足するという試算(経済産業省)もありIT人材の確保は「社会課題」です。

ここまでの「2025年問題」や「2025年の崖」、前回の「2024年問題」にしても、ほとんどが高齢化、人口減少による「人材不足」の問題です。

これからの「人口減少」は様々な分野に影響を与えることでしょう。しかしこれは予想ができていることで、「人口動態」を把握し中期的な視点を持つことで、新たなゲームチェンジのきっかけがみえてくると考えます。

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