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グローバルサウス、急増する中間層が与える世界と日本への影響

国連の4月の発表では、世界の国別人口で本年中にインドが中国を抜き世界1位になるとのことです。また人口推計レポートでは、世界の人口は2058年に100億人を突破、2086年に104.3憶人でピークアウトすると予測しています。

そしてこれから30年間に増加する人口の50%は、次のたった9か国でまかなってしまうとのこと(インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ、エチオピア、タンザニア、インドネシア、エジプト、米国)。つまりこれから「人口のボーナス期」を迎える国は、米国以外ではアフリカ、インド・パキスタン、東南アジアとなります。

また2100年にはアフリカ以外の国はすべて、人口がピークアウト、世界人口の約40%がアフリカになると予測されています。

※2100年の国別人口は、1位インド(15.3憶人)、2位中国(7.7億人)、3位ナイジェリア(5.5億人)、4位パキスタン(4.9億人)、5位コンゴ民主共和国(4.3億人)、6位アメリカ(3.9億人)日本は33位・7300万人に減少と予測

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人口動態は嘘をつかない

人口が経済に与える影響は非常に大きく、特に若い年代が多い国は、生産人口が増加する「人口のボーナス期」となり経済規模の拡大が続きます。今年1位になるインドは経済規模が着実に拡大し続け2022年の名目GDPは世界5位、5年後には日本を抜いて世界3位になる見込みです。

今後はこれらの「グローバルサウス」と呼ばれる地域が、今までの先進国=北半球の国々にとって代わり、世界に大きな影響を与えていくことが確実です。

急増する中間層

現在、世界では「中間所得層(中間層)」と「富裕層」が急増しています。特に経済発展が続くアジアを中心に「中間層」が増加しています。

「中間層」とは、経産省によると「世帯所得が5,000ドル(約65万円)以上、35,000ドル(約450万円)未満の層」を指すとのこと。EUの報告では、2030年には世界の50%の40億人以上が中間層になるとのことで、このパワーは膨大なものになります。貧困層にあった人々が生活に余裕を感じ今までにない支出を始める、1人当たりの額は大きくなくともそのボリュームにより巨大な需要が発生します。

また新興国が発展する過程で起こる「リープフロッグ現象」も見逃せません。既存のインフラが整備されていなかった国で、新しい技術やサービスが一気に広まるこの現象は社会生活を加速的に改善させます。その例として、アフリカでは「固定電話網を整備せずにいきなりスマートフォンが普及」、「リアルの銀行を作らずモバイルバンキングを活用」、「医療分野におけるドローンの活用」などがあり、ICTを活用したさまざまなイノベーションが生まれています。このような超ハイスピードの発展も多くの中間層を産み出す要因で、今までの先進国が50年をかけた発展をわずか数年で実現、先進国を追い抜くことも予想できます。

世界経済をけん引するグローバルサウスの中間層

現在の訪日外国人の中にもアジアの中間層の姿を多く見るようになりました。この傾向はヨーロッパも同様とのこと。パリの高級ブティックにもたくさんのアジアの中間層の姿があり、その購買力は目を見張るとのことです。同じ中間層でも先進国や日本の中間層は、今まで享受してきた発展が頭打ちになり将来への不安から保守的になっているのに対し、アジア、グローバルサウスの中間層は右肩上がりの成長への期待からそのパワーは強大です。高級ブランドや宝飾品、時計や車といった高級消費財への投資はますます増えていき、今後は彼らが世界の消費をけん引していくと思われます。

そして中間層になった人々が注目するものに「医療」があります。経済発展により医療体制も整備され、人々の健康への意識が高まり医療への支出を増やす。それにより「医薬品」の需要も高まり、製薬企業や医療機器メーカー、医療サービスなどのマーケットは巨大になります。

食生活の変化が起こす「食料危機」

また「世界の食料」にも大きな影響をもたらします。

現在、食料の価格高騰が起きています。この原因は、主に世界的な異常気象による農作物の不作、ウクライナの生産減少・輸出の混乱などが挙げられこれらは主に供給の問題です。この状況が続く可能性は高く、それに加えて「グローバルサウス」の急激な発展による需要の急増により「世界の食料需給バランス」が崩壊する可能性も考えられます。

食料の需要は、「人口の増加」ともう1点、「生活水準の向上」にも影響されます。穀物は人間が直接口にする以外に家畜の飼料としての消費も莫大です。グローバルサウスの人々の生活水準が向上し食生活が変化、肉の需要が増えていくと穀物へのニーズが急激に増加、それに加え人々の「高品質な小麦」へのニーズが高まると、小麦の安定的な調達が世界的に困難になります。これは日本にも大きな影響を与えます。

このようにグローバルサウスの発展は、世界の経済やマーケットの拡大に大きな影響を与えていきます。反面、食料問題や医薬品の一時的な不足を引き起こすなど日本にも様々な影響を及ぼしていくでしょう。

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