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訪日外国人が急増。中国人はまだ来ない?

2023年6月22日掲載

日本を訪れる外国人の数が、着実に回復してきています。

東京の銀座の宝飾店や時計店、高級ブランド店には外国人が入場待ちの列ができ、新幹線のホームにも大きなバッグやリュックを背負った多くの外国人があふれ、京都・大阪はもちろん、地方の観光地でも多くの姿をみかけるようになりました。

円安がこれまでは来ることができなかった人々の来日を促進しているのも大きな要因で、この傾向もしばらく続くものと考えられます。

しかしコロナ禍前のインバウンドの特徴であったドラッグストアや家電量販店での爆買いの光景はなく、目立つのは高級宝飾店や時計、ブランド店に列をなす欧米人の姿です。

コロナ禍前の主役であった中国人の姿はまだ多くは見ることができません。

昨年の秋から、新型コロナウイルス対策の入国規制が徐々に緩和され、入国者数の上限の廃止や個人の外国人旅行客の入国の解禁など、入国制限はコロナ禍前の条件に戻り、そして新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い政府は4月29日にコロナによる入国制限などの水際措置を終了、入国時の接種証明や陰性証明の提示は不要となりました。日本を訪問する外国人への制限はほぼ撤廃されたことになります。

4月の訪日外国人数は約200万人。コロナ禍前の66%まで回復

日本政府観光局が5月17日に発表した2023年4月の訪日外国人数は194万9,100人。3月の181万8,000人から約13万人の増加となりコロナ禍前の2019年同月比で66%まで回復しています。

国別では、1位は韓国47万人、台湾29万人、アメリカ18万人、香港15万人、タイ12万人が上位5位。

2019年同月比で、インドネシア22.5%、シンガポール14.4%、メキシコ13.1%、アメリカ8%、中東地域の3.4%と5つの地域が増加となりました。

発展を続けるグローバルサウス、東南アジアで急増する中間層の増加や、欧州やオーストラリアからの訪日客数の回復も進み、この地域からの直行便も復活、今後も回復は続くと予想されます。

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出典元:日本政府観光局(JNTO)

中国人観光客はいつ戻ってくるのか。

一方、コロナ禍前の訪日外国人主役であった中国からの旅行客数は、4月は108,300人と2019年同月の7分の1という水準に留まっています。中国からの入国規制については既に緩和が始まり、4月5日からは中国本土からの直行便での入国者の出国前72時間以内の陰性証明の提示が不要となり、5月8日以降は接種証明の提示も不要となりました。

しかしすぐに中国人観光客の訪日が元に戻るかというとそうではないようです。

なぜなら日本が中国の海外団体旅行の「解禁対象国」となっていないためです。

中国政府は2023年1月から段階的に国外旅行を許可、団体旅行も再開しましたが対象国は限定されています。

(主な対象国:フランス、ギリシャ、スペイン、イタリア、デンマーク、ポルトガル、スイス、ハンガリー、ロシア、タイ、インドネシア、カンボジア、スリランカ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド、フィジー、キューバ、ブラジル、アルゼンチンなど)

この中にアメリカやカナダ、イギリス、オーストラリア、日本などは含まれておらず、いつ解禁されるかは不透明なまま。ですが今後この方針が改められれば、中国からの入国者は急速に増え、訪日外国人客数全体もコロナ禍前の数を大幅に上回ることは確実です。

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出典元:日本政府観光局(JNTO)

2023年インバウンド需要は4兆9,580億円(GDP0.9%押し上げ)に

あるシンクタンクの試算によると、2023年のインバウンド需要は4兆9,580億円。コロナ禍前2019年の4兆8,135億円を超える予想です。

また、このインバウンド需要で、2023年のGDPは前年比で+0.9%の増加になるとのことです。

訪日外国人の増加は日本の経済に大きなプラス効果をもたらし、観光業は主要産業の1つになっていくことは間違いありません。

訪日外国人の急増で生まれる課題

しかし、喜んでばかりいられないのも事実です。中国からの入国者が戻りこのまま訪日外国人が増加していくと「オーバーツーリズム」の発生は避けられません。京都で度々起きているよう有名観光地の交通がパンクし宿泊施設が不足する、など訪日客の急増に社会インフラが追いつかない状況が確実に発生すると考えられます。

この問題の解決策の1つとして「量から質への転換」が挙げられます。人数を追い続けるのではなく、付加価値を高め外国人観光客の一人当たりの消費額を上げていく「質の向上」が図れれば、人数の増加ペースが鈍っても、観光業による日本のGDPを押し上げが可能です。あわせて日本は労働人口の不足という問題も抱えています。ホテルや飲食業の働き手も十分ではありません。今後のインバウンドは「数」から「質」への転換を進めることが急務となるでしょう。

東京や大阪、京都、名古屋といった大都市では、欧米人を対象とした超高級ホテルの開業が続々と予定されていますが、現在の予定だけでは「まだまだ足りない」という声も聞かれます。

今後、グローバルサウスの中間層の急増も予想され、コロナ禍でいったん停止していたインバウンドは加速度をつけて拡大していくでしょう。

この機会を逃さないよう課題にしっかりと向き合っていけば、間違いなく観光業は日本経済を支える大きな柱になると考えます。

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