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2024年問題 山積する社会課題

2023年7月31日掲載

「202X問題」毎年迫りくる課題にどう立ち向かうか?

2024年問題 山積する社会課題

「2000年問題」。20年以上前の出来事ですが記憶に新しい方も多いと思います。

多くのコンピュータ、情報システムが2桁の年号で管理されていたため、西暦が1999から2000に変わる時に「99」が「00」となり停止や誤作動など混乱を起こすと言われ、官公庁や企業のほとんどが、その数年前からシステム修正を強いられました。

2000年1月1日0時を祈るように迎えたエンジニアも多かったのが事実です。

これに代表されるように、「ある年に発生する深刻な影響が起きる社会問題」を「20XX問題」と呼びます。

これから西暦2029年までに発生する「202X問題」。それまでに国や社会で解決しなければならない「課題」は目白押しです。しかし、時期がわかっているため前もっての対処や準備は可能で、課題の解決により新たな「イノベーション」が生まれる機会にもなります。

まず今回は発生まで1年を切った「2024年問題」を紹介していきます。

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「2024年問題」とは

2018年に施行された「働き方改革関連法」で決められた「時間外労働時間の上限規制」により、物流・運輸業界、建設業や医療業界で起きるであろう「労働力の不足」が原因で起こる問題を指します。

「働き方改革関連法」は働き方改革を目的とし「時間外労働の上限規制」を設定し、大企業では2019年4月より、中小企業では2020年4月より、すでに施行されています。

そして5年間の猶予がされていた物流・運輸業界、建設業、医療業界も、2024年4月1日、ついに規制の適用が始まります。

物流・運輸を襲う「2024年問題」

まず、大きな影響を受けるのは「物流・運輸業界」です。トラックのドライバーの拘束時間の短縮、ドライバーの移動距離が制限されるなどの規制が行われます。

これにより「ドライバーの労働時間が減り収入が減少」、「ドライバーの絶対数が不足」という事態が起きると予測されます。そして「輸送時間の長期化」「トラックの輸送距離が制限」「輸送・運送の価格高騰」が起こることが確実視されています。

現在、国内の「モノの輸送」のほとんどをトラックに依存している中、この問題の影響は非常に大きく、ネット通販の発達により現在でさえ短距離の配送がパンク寸前の中、私たちの暮らしを直撃する「社会課題」です。

物流・運輸業界では、トラックから鉄道や船舶への振替、また共同配送や長距離トラックの中継拠点整備など、対策を旧ピッチで進めていますが、抜本的な解決策は見えていません。

ライフラインも直撃、医療体制の危機と建設への影響

医療においても、今まで長時間勤務を課されていた医師やスタッフの労働時間が制限されます。過重な勤務を強いられていた彼らへの負担が軽減されることは歓迎するべきことですが、結果、医師・スタッフの絶対数が不足することは確実です。医師を確保するための人件費・採用コストが増加、診療時間の制限や夜間・緊急治療の中止、また病院経営ができなくなり廃院ということもあり得ます。ライフラインの中でも最も重要な「医療体制」のひっ迫は避けなければなりません。

そして建設業への影響も大変深刻です。工事に携わる人員が不足すれば、老朽化したインフラ整備の遅れにも繋がります。工事期間の遅れや長期化、建設費の高騰が必然で、人材を外国人に求めていかざるを得ない状況です。都心でのオフィスビルの建設計画の見直し、住居用マンションの今以上の高騰も予想されます。

また大きな影響を受けているのが、あと2年に迫った「関西・大阪万博2025」のパビリオン建設です。7月27日の報道では、「運営主体の日本国際博覧会協会が、この時間外労働の上限規制を万博工事には適用しないよう政府側に要請した」とのことです。

「2024年」まで1年を切った状況で、各業界は対応にせまられています。

完全解決は難しいと思われますが、この「社会課題」をきっかけにパラダイムシフトや新たなイノベーション、今までなかったビジネスモデルの登場も期待されます。

ピンチをチャンスに変える新たなプレイヤーはどこなのか、今後の動きに注目です。

もう1つの「2024年問題」

20241月に「ISDNINSネット)」が終了します。NTTが長年提供してきたインターネット通信「ISDN回線サービス」は多くの企業や小売店などで使用されています。ここ数年で、インターネット通信は光回線へと切り替えが進んでいますが、ISDNは、まだ多くの企業で、重要な部分に使い続けられています。サービス終了を控え早急な対策が必要な状況です。

次回は「2025年問題」を取り上げます。

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