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崩壊した「新自由主義経済」 変わる世界の枠組み、インフレの時代へ
2025年6月4日掲載
トランプ大統領は4月2日、各国への追加関税を発表しその日を「解放の日」と宣言しました。発表から2ヶ月が経ちましたが、今でも毎日のようにニュースになり続け、世界のマーケットを揺さぶっています。
今から遡ること35年、東西冷戦が終結した後、新たな世界秩序を支えてきたのが「新自由主義経済」です。トランプ氏が繰り出した一手で、この「新自由主義経済」は崩壊しました。今、世界のルールがまた大きく変わろうとしています。
冷戦後の世界を支えた「新自由主義」
「新自由主義」とは、各国の政府の役割を縮小し経済への介入を抑え、市場原理に任せるもので自由競争によって経済の効率化や発展を実現する、という考え方です。
1995年発足のWTOを中心に二国間、個別に行ってきた通商協議を、全世界的なルールを基にした枠組みで行う方法で、グローバル化を進展させ、世界的なサプライチェーンを構築し世界を一体化させ貿易を飛躍的に拡大させました。
結果は、中国に勝利をもたらし、また世界の富が一極に集中し貧富の拡大を招くなど、ほころびが見え始めていました。
壊れたサプライチェーン、関税によるインフレの深刻化
「大きな政府」と「小さな政府」。近代の政治経済ではこの2つの振り子が揺れ動いています。
トランプ氏が進める「関税政策」は、自由貿易をやめブロック化を目指すもの。最適な国で生産するサプライチェーンは崩壊しコストは増加し、結果、インフレが加速することは確実です。
日本では、自動車なら必要な部品メーカーが系列で存在していますが、この数年で製造業が弱体化したアメリカやヨーロッパのような垂直型のサプライチェーンを持たない国ではより深刻になります。
日本でも今後インフレは深刻になると考えられます。長期間にわたりデフレが続きマインドがしみ込んだ私たちは、すぐに値上がりは止まり元の値段にもどる、と考えがちですが、世界の大きな流れは確実に「根深いインフレ」となるでしょう。
「もの」の価格が高騰、現金の価値が下がり、不動産価格の上昇を招くインフレ。金利も上昇します。これらの状況は現在のシニア世代が「昭和の時代」に体験したことです。
過去、そこで起きたことは「急激なインフレ」「預貯金から不動産や株式への移行」などでした。ここ数日の「備蓄米を求めて大型スーパーに行列」も昭和の時代に見た風景です。
求められる「マインドシフト」
世界の枠組みが大きく変わり、現在がこれから20年30年の「大きな転換点」である可能性は非常に高いと考えます。トランプ氏が出てこなくともこの流れは必然だったのかもしれません。ヨーロッパで相次ぐ保守、右派・極右勢力の台頭もその流れの1つです。
「新自由主義の終焉」、これまでの連続性は終わりを告げ「分断の時代」に向かう。今までの世界秩序は通用しない時代がきています。
繰り返しですが、すでに「デフレの時代」は終わり「インフレの時代」に入っています。
私たちの考え方も大きく転換しなければなりません。「マインドシフト」が求められています。
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