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アメリカとイギリス「2国間の貿易協定」を合意!トランプ関税の影響は

2025年5月9日掲載

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日本時間5月8日(木)の夕方、アメリカとイギリスが「2国間の貿易協定」に合意、というニュースが飛び込んできました。トランプ大統領が「トランプ関税」を4月9日に表明した後、最初の「2国間の合意表明」となります。

詳細発表はこれから数週間かかるようですが、現在わかっていることは、アメリカがイギリスから輸入する「自動車」に低関税輸入枠を新設(年間10万台)、輸入車にかかる関税を27.5%から10%に引き下げ、「鉄鋼・アルミニウム製品」の25%の追加関税を0%にする、農産物」は、イギリスがアメリカ産牛肉1.3万tを無税での輸入可、アメリカはイギリスに牛肉の輸入枠を再配分する、などです。

またイギリスが100億ドル、ボーイング社の航空機を購入との話も出ています。その他注目されていた「非関税障壁の撤廃」「デジタル貿易の拡大」などはまだ具体的ではないようです。

トランプ氏はこの合意で「イギリスへの輸出が50億ドル増加」と発言。一方イギリスにとってアメリカは最大の輸出国で、特にランドローバーやジャガーといった高級自動車はアメリカが大きなマーケット。恩恵は少なくありません。

着々と手を打っていたイギリスと日本の関係

これまでイギリスのスターマー首相は、2月27日にホワイトハウスでトランプ氏と会談。その際「国賓としての来英を招請する」チャールズ国王からの親書を手渡すなど、イギリス王室をリスペクトするトランプ氏へ戦略的なアプローチで、すでに追加関税を避けるための協議の合意を取りつけていました。

ただ、この合意の前提には、イギリスはアメリカの世界第5位の貿易黒字国ということがあります。オランダ、香港、UAE、オーストラリアに次ぎ、約120億ドルの黒字。日本の約700億ドルの赤字とは立場が大きく違うのも忘れてはなりません。

今回の米英の貿易協定がまとまったことにより、各国は交渉を急ぐことになります。

当初、最初の会談をホワイトハウスにてトランプ氏同席で行った日本は、特にイギリスの次になることは大きな意味を持ちます。

日本とイギリスは、3月7日に東京で初の外務・経済閣僚による経済版「2プラス2」の会合を行うなど連携を進めています。イギリスに工場を持つ日本企業は多くmade in UKとしてアメリカに輸出すれば、関税は10%に節約可能。日英の連携もより重要になっていきます。

トランプ氏がイギリスを選んだ訳

今回、トランプ氏は「イギリスとの合意」をセンセーショナルに発表しました。7日には自身のXで「重大な発表がある」と前もって表明し期待をあおりました。かつての宗主国であり世界の盟主である「大英帝国」との合意。イギリスはEUから離脱しており、アメリカのEUへの強硬姿な方針と矛盾もしません。現在も伝統・格式で世界から尊敬を集めるイギリスを最初の合意国としたことは、マーケティング的な視点でも成功と考えます。

同盟国の日本との合意に比べるとインパクトもあり、また権威主義に弱いトランプ氏らしい選択です。

アメリカの自国保護政策の長期的な影響は

このトランプ氏の世界を相手にした関税交渉。これは結果的にはアメリカの製造業のイノベーションを妨げることになると考えます。アメリカの製造業は、今回もトランプ氏の保護政策的手法により、何も変わることなく、他国へのマーケティングも行わず、イノベーションも産み出さずに生き残るでしょう。

かつて、日本はアメリカからの様々な圧力を突破してきました。例えば古いですが1970年台の自動車への排ガス規制。日本の自動車業界は突き付けられた難題を一つ一つクリア、これがイノベーションに繋がり、現在の大きな強みになっています。

また日本企業も工場を積極的に海外に移転させるなど、押し寄せる難局を乗り越えより成長しています。

今回のトランプ関税も同様に日本の製造業はいつものように危機をチャンスに変え、数年後に今以上の発展を遂げていること期待します。

アメリカから難題をつきつけられた世界の国々は、それぞれも国民性や長所を活かし、より発展を遂げていくと考えます。価格競争には参加せず、技術力と適用力をもってその筆頭が日本になると確信します。

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