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ホワイトハウス・トランプとゼレンスキーの決裂! ヨーロッパ首脳 激震の週末・72時間

2025年03月03日掲載

228日、日本時間の朝、衝撃的な映像が飛び込んできました。

ホワイトハウスで行われたウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ大統領の会談。

交渉は進み、昼食と書面へのサインを控え、報道陣を部屋に入れたブリーフィング。ニュースで流れた映像は、国家の首脳会談ではあり得ない、見たことのない激しい議論・口論となっていました。

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きっかけは、始まって40分、JD・ヴァンス副大統領のアメリカ外交についての発言に、ゼレンスキー氏が「JD、あなたのいう外交とは何か」と聞いたことから始まりました。それから約10分間、様々なメディアでご覧になったと思いますが、最後はトランプ氏が「あなたにはカードがない、私たちとサインをしたらよい立場になれるのにそれに全く感謝の気持ちを示していない、それはよくないことだ」「素晴らしいテレビになった」と語り席を立ちました。

ほとんどのニュースでは最後の10分間のダイジェストが使われています。それまでの40分間、冒頭でトランプ氏は「ゼレンスキー大統領をお迎え出来て光栄」「多くの戦士が命を落としたこの戦いを終わらせる」などと紳士的な発言が目立ち、ゼレンスキー氏のプーチン氏に対する憎悪の感情と、トランプ氏のバイデン前大統領への非難、そしてトランプ氏が頻繁に「ディール」という言葉を使用していたのは気になりましたが、この後のサインに向けて順調に進んでいるようにみえました。

ホワイトハウスでの超大国アメリカ大統領とロシアからの脅威に3年間耐えているウクライナの大統領との、急遽決まった今回の会談。

この前の週にはトランプ氏に「選挙を経ていない独裁者」と言われ、「今までの支援3000億ドルの見返りにレアアースの権益の譲渡」の条件を出され、「安全保障の確約がない」と一度は提案を断ったゼレンスキー氏が、再度「アメリカの仲介による停戦と今後の支援継続」を訴えるためにホワイトハウスに乗り込んだものでした。しかし、残念ながら土壇場で決裂してしまいました。

この結果を受け、ヨーロッパ各国はすぐに動きました。

まずヨーロッパ各国の首脳は28日、トランプ氏と激しく口論したゼレンスキー氏の擁護の発言を次々と発表。ゼレンスキー氏はその足でイギリスに飛び、翌31日にスターマー首相と会談しイギリスの支援を確認。イギリスは4280億円の融資を約束。同時にドイツは4690億円の追加支援を議会に諮りました。

    ヨーロッパはコミットするしかない

そして翌日2日には、スターマー首相が呼びかけたロンドンでの「緊急首脳会合」が開催されました。これにはドイツ、フランス、イタリアなど欧州10カ国以上の首脳のほか、カナダのトルドー首相やEUのフォンデアライエン委員長、NATOのルッテ事務総長が出席。もちろんゼレンスキー氏も招かれています。

この会議の後、スターマー氏はウクライナに安全保証を提供する「有志国連合」の創設を発表。またイギリス、フランス、ドイツ、ポーランドなど10カ国以上の首脳が、自国の「防衛費の増額」を合意しました。

ヨーロッパ各国が欧州の安全保障に責任を果たすことを明確にしたことになります。

以上によりヨーロッパがウクライナの安全保障を積極的にかかわる姿勢を示し、ゼレンスキー氏とトランプ氏の関係を修復し、アメリカ、トランプ氏にウクライナの戦後の安全保障への関与を再度求めていくことになりました。

「歴史の分かれ道にわれわれは立たされている」とスターマー首相が開いた32日のヨーロッパでの首脳会談。緊急の呼びかけにも関わらずヨーロッパの首脳が集まりました。

もしこの前々日のトランプ氏とゼレンスキー氏との会談が合意していた場合でもそれを前提に何らかの会議が予定されていたのかもしれません。

結果、ヨーロッパ各国が戦後のウクライナにコミットすることを条件に、再度ゼレンスキー氏とトランプ氏がディールに合意、その上でプ―チン氏との停戦合意を目指すことになりそうです。

    伏線を回収するトランプのシナリオ?

もしかすると、トランプのシナリオ通りだったのでは?という観測も否定はできません。「開始40分のJ・Dの発言を皮切りに一気に破談にもっていく」、両国の会談の決裂は世界に危機感を植え付け、ゼレンスキーはその足でヨーロッパに飛び、ヨーロッパの関与を明確にして再度アメリカの支援を取り付ける。

停戦後の安全保障はヨーロッパが果たし、アメリカは鉱物資源の経済的な関与によりロシアをけん制していく。これはゼレンスキーにとってもトランプにとっても最善のシナリオかもしれません。

先の「ミュンヘン安全保障会議」でJD・ヴァンスは「ヨーロッパは軍事支援を米国に頼らず自らがこれまで以上に軍事費を負担するべき」と発言しました。この週末で、彼の言う「ヨーロッパのコミット」が現実になりました。「自国が攻め込まれないためには自らが防衛する」、またその防波堤になるウクライナの安全保障にヨーロッパ各国がしっかりと関与していく。

また今回、日本を含むそれ以外の国、アメリカの同盟国も「有事の際はアメリカが守ってくれる」ということが「不確実である」ことが明確になりました。

「自国のことは自分で守る」、トランプ氏は世界にはっきりと表明したといえます。

今回、ヨーロッパが防衛費の増額を表明したように、今後それ以外に国も「国防の強化」が求められるのです。

ロシアとウクライナの和平で、アメリカのウクライナへの防衛装備品の支援はなくなります。が、グローバル的には各国の防衛予算が増額され、結果的にアメリカやヨーロッパの防衛産業への影響は相殺されるでしょう。もしくはより多くの受注を得る可能性もあります。

ヨーロッパとウクライナからの「ディール」の申し出をトランプがどう受けるのか、次のアクションに世界がまた驚愕するかもしれません。

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