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トランプ政策を遂行する世界最高レベルのブレーン集団「チーム・ホワイトハウス」

2025年5月21日掲載

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アメリカのトランプ氏が非常に精力的に動いています。トップニュースに、ほぼ毎日登場、世界は彼の動きを注視し、マーケットもトランプ氏の発言に敏感に反応しています。

これらのトランプ氏の発言や行動、当初は唐突なものが多く、場当たり的なものと考えられましたが、そこには伏線が張られ、明確な意図や目的を持つストーリー、シナリオがあることがわかってきました(全てではないでしょうが)。

「トランプ政権」、トランプ氏が率いるホワイトハウス「政権チーム」は、当然ですが様々な経歴・経験をもつ優秀なメンバーで構成されています。

このチームの最大の特徴は「大統領の政策を実現するための中核集団」ということ。

メンバーは「大統領の意志を形にする」ためのブレーンで、政策専門家、政党関係者、選挙の支持者などから選ばれ、個々には忠誠心と能力が最重視されます。

現在、トランプ氏が次々と繰り出す政策や各国との交渉には、この「チーム・ホワイトハウス」のメンバーの個性や思想が大きく影響、それぞれに最適なメンバーがあたります。

例えばこの一か月のトランプ政権の外交・交渉の主なメンバーは下記になります。

〇中東歴訪
・マルコ・ルビオ国務長官
・ピート・ヘグセス国防長官
・スコット・ベッセント財務長官
・ハワード・ルトニック商務長官
・スージー・ワイルズ大統領首席補佐官
他、スティーブ・ウィトコフ中東特使、ジャレッド・クシュナー氏

〇ロシア・ウクライナの和平交渉
・マルコ・ルビオ国務長官
・マイク・ウォルツ国家安全保障顧問(5/1に国連大使に)

〇中国との関税交渉
・スコット・ベッセント財務長官
・ジェミソン・グリア:通商代表部(USTR)代表

〇イギリスとの関税交渉
・ジェミソン・グリア:通商代表部(USTR)代表
・ハワード・ルトニック商務長官

〇日本との関税交渉
・スコット・ベッセント財務長官
・ジェミソン・グリア:通商代表部(USTR)代表
・ハワード・ルトニック商務長官 

となっています。彼らはトランプ政権の政策実行のためにまさに世界を飛び回っています。

「チーム・ホワイトハウス」の役職と現在のメンバー

2025年5月現在のトランプ政権の主要メンバーとその特徴は以下の通りです。

■JD.バンス 副大統領
オハイオ州シンシナチー郊外のいわゆる「ラストベルト」の出身
苦学してオハイオ州立大学、イエール大学法科大学院を卒業、
その後PayPal創業者のピーター・ティール氏らのベンチャー・キャピタルの経営に参画
自らの壮絶な生い立ちを淡々と綴った『ヒルベリー・エレジー』が2016年にはベストセラーに、その後オハイオ州上院議員当選
1984年生まれの40歳。ミレニアル世代の代表で絶大な人気を持ちます。

政策的にはアメリカの製造業の復活、石油・天然ガスなどの掘削推進、国境管理の強化などトランプ氏と重なる部分は多く
「アメリカ第一主義」を掲げ、ウクライナへの支援継続に反対の立場をとる

■スージー・ワイルズ 大統領首席補佐官:
68才・女性初の首席補佐官
フロリダ州出身の政治戦略家、トランプ氏の大統領選を主導し政権移行チームの共同議長
首席補佐官の役割はホワイトハウスの全体統括、スタッフ管理、日程調整など、
彼女の重要な役割はトランプ氏が脱線を防ぐことで、
トランプ氏からの信頼は厚くトランプ氏を制御できる数少ない人物

■スティーブン・ミラー 次席補佐官
「トランプの頭脳」ともいわれ、第1次トランプ政権で大統領上級顧問、またスピーチライターを務めた1985年生まれの39才
現在のホワイトハウスで「米国第一」のMAGA思想を主導する中心
不法移民政策の強硬派で保守的な政策の推進に深く関与

■マルコ・ルビオ 国務長官
初のラテン系国務長官となる53歳
フロリダ州選出の元上院議員で両親はキューバ出身
2016年の大統領選の共和党予備選に立候補し地元フロリダ州の予備選でトランプ氏に大敗、その後関係を修復した。
トランプの高関税政策を支持、伝統的な保守派で「対中・イラン強硬派」と言われる

■スコット・ベッセント 財務長官
1962年生まれ現在62才
父親の不動産投資の成功と失敗を肌で体験
投資家ジム・ロジャーズ氏に師事しヘッジファンド「Key Square Group」を創業
2006年から5年間、母校イエール大学で経済史を教えるアカデミックな素養を持つウォール街出身者
ジョージ・ソロス氏を通し日本のジャーナリストや金融関係者とも親しく日本とのパイプは太く「アベノミクス」の円安により巨利を得た逸話を持つ

政権の最も重大なミッション「減税と関税政策」を主導する役割を担う
トランプ氏の高関税政策に賛同し中国・ロシアに対しより強硬な経済政策を唱え、関税を貿易交渉や外交のためのツールと考える

■ジェミソン・グリア 通商代表部(USTR)代表
対中強硬、関税政策の推進者
カリフォルニア州出身で空軍に従事の後、通商を専門とする弁護士に

前トランプ政権時のUSTR代表の側近として、米中、日米の貿易交渉などに深く関与
USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の成立の中心
保守的価値観とアメリカの産業を守る強い信念を持つ対中強硬派でトランプ氏の「アメリカ第一」を積極的に支持し「アメリカ経済の再興」を貿易面から支える中核人物

■ハワード・ルトニック 商務長官
投資銀行のトップを務めるウォール街最大のトランプ氏支援者
政権移行チームの共同議長を務め新政権発足に尽力
「アメリカ・ファースト」の信念が強く製造業の国外流出を非難、対中強硬派で高関税政策を推進

その他注目されているその他のメンバーには
27歳で史上最年少のホワイトハウス報道官となった「キャロライン・レヴィット」
ワクチン懐疑論者として知られる「ロバート・F・ケネディ・ジュニア」保健福祉長官などがいます。

上記の「ホワイトハウス・チーム」以外にも、トランプ政権発足に大きく寄与し話題を提供し続けたイーロン・マスク氏(DOGE・ヘッド)をはじめとした、シリコンバレーなど西海岸のIT企業創業に関わった超富裕層で「テクノリバタリアン」が大きな影響力を持つと言われています。

前トランプ政権では、多くのメンバーがホワイトハウスを離れました。

それを教訓に組織された今回のチームからは今のところ不協和音はイーロン・マスク氏と1部のメンバーに見られたくらいです。イエメン空爆の機密情報をSNSでジャーナリストに共有したウォルツ補佐官(国家安全保障担当)の解任(国連大使に就任)が、5月頭に起きましたが。

繰り返しになりますが、次々と繰り出されるトランプ氏の政策と彼の動向・言動の裏には、トランプ氏の強烈な個性の陰に隠れた、彼ら「チーム・ホワイトハウス」により作られ、遂行されています。彼らを追うことでアメリカの次の打ち手が見えてくるのです。

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