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トヨタも巻き込むロケットベンチャー「インターステラテクノロジズ社」の可能性

2025年12月22日掲載

先週の12月18日、北海道を拠点とする「ロケットベンチャー企業」インターステラテクノロジズ社が、福島県南相馬市に「東北支社」を開設しました。開発を進める小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の製造体制強化を図ることが目的で、その夢にまた一歩近づきました。
同社の小型観測ロケット「MOMO」は、2019年5月に国内民間単独開発ロケットとして初の宇宙到達を達成、7回の打ち上げを成功させています。その実績を経て、現在はより大型の人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発を進めています。 

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インターステラテクノロジズ社とは

インターステラテクノロジズは、堀江貴文氏らが参加し、「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」ことを目指し2013年4月に設立された日本の民間ベンチャーです。
拠点は北海道十勝地方の「大樹町」で、代表取締役CEOを務めるのは稲川貴大氏。東京工業大学(現東京科学大学)在学中からロケット開発に取り組み、「宇宙を国家だけのものにしない」という思いが創業の原点とのこと。少し前までは日本の宇宙開発はJAXAを中心とする国が主導、民間が打ち上げビジネスを行うなど考えられませんでした。そうした中で同社は、スペースXのように民間でのロケット開発に挑戦しています。

大樹町には「北海道スペースポート」が整備され、射場、滑走路、管制設備が集積し、北海道の人口5,000人の町が宇宙産業の最前線になっているのです。
同社の技術面での特徴は「小型・シンプル・量産志向」。世界の競合であるRocket Labや中国系ベンチャーと比べて、「低コスト化と燃料の独自性」において明確な差別化を狙っています。
世界のロケット市場は、主力が小型衛星の移行し構造転換期にあります。従来の大型ロケットによる「相乗り打ち上げ」では、顧客が希望する軌道や時期を選びにくいという課題がありました。そのため小型衛星専用で、必要な時に打ち上げられるロケットへの需要が高まっています。

液化バイオメタンの特徴と優位性

インターステラテクノロジズが注目される大きな理由の一つに、ロケット燃料に「液化バイオメタン」を活用する、という点があります。「液化バイオメタン」は、牛などの糞尿や食品残渣から発生するメタンガスを精製・液化した燃料です。
 通常の化石燃料由来メタンと比べ、燃焼性能そのものはほぼ同等でありながら、原料が再生可能であるためCO₂排出を実質的に相殺できます。また特にコスト面でも優位性が大きいのが強みです。
北海道十勝地方は日本有数の酪農地帯であり、安定的に大量の原料を確保できる点が大きな強みです。つまり、燃料から部品製造、試験、打ち上げを可能な限り地域内で完結させる「地産地消」のビジネスモデルを「宇宙ビジネス」で実現していることがインターステラテクノロジズの大きな特徴です。宇宙開発と一次産業が結びつく点は、世界的にも極めてユニークです。

世界のトヨタが注目し出資、ロケットもクルマのように量産

2025年1月初め、インターステラテクノロジズはトヨタのグループ会社「ウーブン・バイ・トヨタ株式会社」と資本および業務提携に合意、約70億円の出資を受けたことを発表しました。トヨタは出資以外にも、取締役派遣や生産・品質管理ノウハウ提供によって、ロケット製造を高品質かつ量産可能にする支援を行っていくとのことです。
トヨタは「モビリティの未来は宇宙も含む」という長期的視点を持っており、今回の取組は、自動車産業の生産技術を宇宙産業に転用するという新しい協業モデルとして大きな注目をされています。加えて「トヨタ自動車北海道」からはエンジニアの出向受け入れなど、人材面での協力も進んでいます。
またトヨタグループだけでなく、海外の宇宙関連企業とも連携を強めています。2025年7月には、小型衛星の分離システムや衛星統合サービス分野のリーディング企業であるドイツの「Exolaunch社」と戦略的パートナーシップ契約を締結し、衛星分離システムやライドシェア打ち上げでの協業を進めています。

夢が溢れるビジネスへの期待

インターステラテクノロジズが開発を進める「ZERO」ロケットは、現在初号機の打ち上げ準備を進めており、すでに7機の衛星搭載が決定しました。

小型ロケットは、従来型の大型ロケットと比べ、総コストでおおむね10分の1以下に抑えられるとされています。これにより、宇宙は一部の国家や巨大企業だけのものではなくなります。
インターステラテクノロジズ社の挑戦は、日本から世界の宇宙市場へ切り込む現実的な一歩です。長期視点で見れば、大きな期待をかけてよいビジネスであり、その成長は日本経済に新たな希望をもたらすでしょう。

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