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進む「次期戦闘機」の開発。2035年の配備をめざす「第6世代戦闘機」

2024年3月14日掲載

3月8日のニュースで「自民、公明両党は、日英伊3カ国が共同開発、生産する次期戦闘機について第三国への輸出容認で近く合意する見通し」と報じられました。公明党が難色を示していましたが、対象を次期戦闘機に限定、輸出対象国も絞り現在戦闘が行われている国は除外ということで決着しそうです。

現在、日本がイギリス、イタリアと共同開発中の「次期主力戦闘機」は、2035年の配備をめざす「第6世代戦闘機」です。

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なぜ政府・自民党が「第三国」への輸出にこだわったのか。それは「コスト」と「日本が求める性能の実現」の問題からです。

まず、高額になる次期戦闘機のコストを下げるために、イギリス、イタリアは第三国への輸出による生産数の拡大を目指しています。日本が輸出できない場合は、このプロジェクトへの日本の発言権は弱まり「日本が優先する性能の実現」が危うくなるという可能性があります。日本の脅威となる可能性のある中国、北朝鮮、ロシアは、海を隔てており、航続距離の長さが必要になります。これは機体の大きさやエンジン性能にも関連する大きな部分で、日本としては譲ることはできません。

イギリスはNATO加盟諸国。イタリアは中央ヨーロッパ、そして日本は「防衛装備品・技術移転協定」を結ぶアジア・オセアニア地域でインドやオーストラリア、インドネシア、フィリピンが輸出対象となります。専守防衛のためにもアジアの友好国への配備をすすめ、協力して安全保障環境を作ることは重要です。

最新となる第6世代戦闘機とは

この2035年に配備予定の「第6世代戦闘機」とはどんなものなのでしょうか。
日本はF2の後継機として配備の予定です。現在の情報だと、最上級のステルス性能を持ち、他の有人・無人機や基地、人工衛星と連携した高度なネットワーク機能を装備。また、AIを活用した完全自立自動制御も可能。

最早、戦闘機というより「防空ネットワーク・システム」と言ってもよいでしょう。制空権そして航空優勢を守るための防衛に欠かせないものになります。

そして戦闘機は次のような世代で分類されています。

第1・2世代戦闘機(~1960年)
パイロットが目視でドッグファイト

第3・4世代(1960年~2000年)
レーダーや長距離ミサイルを装備、目では見えない敵へ遠距離からの攻撃が可能
第4世代の戦闘機(アメリカ・日本):F14、F15D、F16、F/A18、F2 など

第5世代(2000年~)
ステルス性能、高精度センサーを備えレーダー探知は難しい
第5世代の戦闘機(アメリカ・日本):F22、F35 など

第6世代の戦闘機(2035年ころ)
最上級のステルス性能、有人・無人機や基地、人工衛星との「ネットワーク戦闘」が可能。無人機を次期戦闘機が指揮して複数機での戦闘形態をとる。

現在日本が保有する戦闘機は、
「第4世代機」のF15が200機(価格は1機:122億円)、日米共同開発のF2が91機(同:132億円)。
「第5世代機」のF35は現在33機。今後147機を購入予定(A型が同:134億円、B型が同:179億円)とのことです。

世代が違う戦闘機が実戦で戦った場合

では、もし第5世代機と第4世代機が戦ったらどうなるか?

第5世代機は、ステルス性能によりレーダーに探知されず敵に発見されないまま飛行します。つまり第4世代機のレーダーには第5世代機の影も形も捕らえることができない。しかし第5世代機のレーダーは第4世代機をしっかり捕らえて一方的に先制攻撃をかけることが可能。

実践で戦えば、第5世代機は、約100㎞以上離れたところでミサイルを発射、第4世代機はそれを避けるしかありません。避けたとしても第4世代機は第5世代機を発見することはできず、一方的に攻撃を受けることになります。

実際、2006年アラスカでの「ノーザン・エッジ演習」では、第5世代機のF22、1機が運動性能では第4世代機と同等と言われるT-38を144機撃墜したといいます。

因みに戦闘機というと、目的は「敵を攻撃するもの」と考えますが、厳密には「戦闘機」と「攻撃機」に分かれ、それぞれ任務は「戦闘機=空中戦、防空任務」「攻撃機=敵地や敵の軍艦を攻撃する任務」となります。

映画「トップガン・マーヴェリック」で、トム・クルーズ演じる、ピート・"マーヴェリック"・ミッチェルが乗っていたのは第4世代機の「F/A18E/Fスーパーホーネット」。頭の「F」はファイター=戦闘機、「A」はアタッカー=攻撃機を意味し、この機体は戦闘機と攻撃機の二役を兼ねることができます。また末尾のEは1人乗り、タイプFは2人乗りとのこと。

しかし、"マーヴェリック"はこのF/A18E/Fスーパーホーネットで第5世代機を撃墜しました。この第5世代機の機影はロシアのスホーイSu-57だったと言われます。

初代の『トップガン』の主役機、は第4世代機の初期のエース、グラマンF14トムキャットです。

現在、最強のステルス戦闘機といわれる第5世代機のF22(愛称ラプター)は、2016年に北朝鮮への圧力のために嘉手納基地に12機が暫定配備され抑止力としてその存在感を示しました。

つまり最新の戦闘機は、実際の戦闘を想定した能力より保持自体が強力な抑止力となります。今後、対象の領域が宇宙にも拡大し、技術の進歩により戦い方も今までとは全く違ったものになるでしょう。

トップガンの出番は無くなるのかもしれません。

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