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止まらない世界の防衛費の急増。「もしトラ」の現実味

2024年2月19日掲載

11月のアメリカ大統領選挙。「もしトラ」がより現実味を帯びてきました。スーパーチューズデーはこれからですが共和党内の支持は盤石。対する民主党も現在(2月中旬)はバイデン氏が有力。このままで進めば現職対前職の戦いですが、トランプ氏が一歩リードとみられています。

こうした情勢を踏まえてか、トランプ氏が早くも牽制球を投げ始めました。復活となれば「連続性」を止め世界の流れを変えてしまう発言に、各国は既に右往左往しています。発言が支持層強化目的のリップサービスなのか、本気の政策なのか見極めるのは過去の彼の行動をみると困難です。

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2月10日、欧州各国に頭の痛いニュースが流れました。

「負担しない加盟国は守らない。好きにふるまうようロシアをけしかける」

トランプ氏はサウスカロライナ州の集会で、再選した場合「NATO加盟国が攻撃されてもアメリカは協力しないこともある」と語りました。理由はNATO加盟国が「防衛費をGDP比2%以上にする」という合意目標を守っていないためでその達成を促したとのことです。(7月時点で2%の目標を達成している加盟国は11カ国のみ)

この発言にNATO諸国は大きな衝撃を受けました。万が一の侵攻や戦闘が起きた場合、アメリカ大統領のこの発言を本気だとしたらNATOは大きな打撃を受けてしまう。

そのためか、NATOのストルテンベルグ事務総長は即座に14日、2024年には加盟31カ国中18カ国が目標を達成する見通しだと発表しました

またEUもトランプ大統領再選の場合、アメリカが欧州の安全保障への関与に消極的になるリスクを意識してか、16日の記者会見で「防衛産業戦略を近く公表する」と表明するなど、世界は「自国は自国で守る」というスタンスへの転換を急ぎ始めました。

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トランプ発言が本気だと裏付けるものとして、同時期に前政権時の高官2名から「彼が再選すればNATO脱退を真剣に進めるだろう」と発言しています。前政権時にNATO脱退計画を進めたが寸前で撤回したのは事実で、アジア、韓国・日本からの米軍撤退も示唆していたといいます。2019年6月のインタビューで当時のトランプ大統領は「日本が攻撃されたならアメリカは戦う。そして犠牲を出すことになる。けれどアメリカが攻撃されても日本はソニーのテレビでその模様を見るだけだろう」と語ったといいます。

日米安保条約が廃棄されればアメリカ軍は日本に駐留する理由はなく、日本は自国で自国を守らなければならず防衛力の整備が急務となります。また国内から核武装論も出てくる可能性もあります。韓国も同様で「在韓米軍撤退」も持ち出すでしょう。

ロシアのウクライナ侵攻はNATOの大きな脅威となり、またイスラエルのガザ侵攻から中東での火種、そして中国や北朝鮮のアジアでの脅威。皮肉にもトランプ氏の不在時、世界は近年で最も危険な状況に陥りました。

そして「もしトラ」で、今までの「国際協調による防衛の枠組み」が崩れるとしたら。

世界各国は自国の防衛体制の整備を急がざるを得ないでしょう。今後、世界の防衛への支出は急増が見込まれ、おそらくその流れは1年2年では止まりそうもありません。

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