GLOBAL&TREND

2024年アメリカ大統領選・第三の選択肢へ

2023年12月8日掲載

「世代交代」「新しい時代」を体現するニッキー・ヘイリー氏への期待

次のアメリカ大統領選挙は「2024年11月5日」。すでに11ヵ月を切りました。

年明けからはアーリー・ステーツ(アイオワ州・ニューハンプシャー州・ネバダ州・サウスカロライナ州)で「予備選挙」が始まり本番に突入します。この行方は世界、そして日本に与える影響は大きいです。

先月まで、民主党は現職のバイデン大統領、共和党は前職のトランプ氏が大方の予想で、この対決は揺るがないと思われていました。

しかし、以前のコラムにも書いたよう「高齢問題」はくすぶっています。バイデン氏は11月に81歳、当選したら82歳。任期の最後には86歳となります。一方のトランプ氏も当選すれば就任時78歳で、その4年後は82歳。どちらにしても「超高齢のリーダー」となります。世界のリーダーを自負する「アメリカ大統領」は激務です。彼らには「空白の時間」は与えられず、万が一の際の影響は多大です。

また現在米国は、国内で経済問題を抱え、外交ではイスラエルのガザへの攻撃継続、終わらないロシア・ウクライナ紛争、中国との緊張、と多方面で難問に直面しています。

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新たな選択肢を求める声の高まり

こうした中行われる2024年の大統領選は、バイデン大統領とトランプ前大統領の二択となる前に、若年層を中心に「若さ」そして「分断を許容しない」、「新たな次世代の指導者を選択肢」に望む声が高まっています。

内政・外交、そして高齢の以外にも、両氏は問題を抱えています。バイデン氏の次男が銃の不法所持など3件の刑事事件で起訴され、共和党は盤石と見られていたトランプ氏本人の「刑事訴追」という大きな弱点をもっています。4つの訴訟でトランプ氏が有罪判決を受ける可能性は高く、有罪の場合は、現在の党内で約50%を超えている支持率が下がっていくことは確実です。

そして11月に入り、共和党でついに新たな動きが出てきました。

女性候補のニッキー・ヘイリー元国連大使を支持する大口の献金者が続出。複数の世論調査では、ヘイリー氏がフロリダ州知事デサンティス氏を抑えて共和党候補の支持率2位になるなど、トランプ氏の強力なライバルとして急上昇してきました。

彼女への支援を決めた経済界の大物も多く、12月には多くの支援パーティの開催が予想され、選挙資金も一気に増えていく模様です。

要因には、8月からの3回行われた候補者討論会でのパフォーマンスが高く評価されたことと、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの戦争という地政学的な問題がヘイリー氏の外交実績への期待を集めることになっているようです。

「高齢な男性候補」と真逆な存在の、ニッキー・ヘイリー氏

国連大使を務め外交交渉に明るく、ウクライナ支援に積極支持を主張。国際情勢がこのまま推移すると、ヘイリー氏への期待がますます高まると考えられます。また討論会では「強い女性像」を掲げ、「イギリスのサッチャー氏」の言葉を引用するなど、その立場を積極的にアピールしています。

この背景には、「高齢な男性」への裏返しの評価で、国民から「世代交代」「新しい時代」の候補者を望む声が多く、それに応えられる多くの要素をヘイリー氏が持ち合わせていること、また、もし現時点で「民主党:バイデン氏 vs共和党:ヘイリー氏」になった場合、ヘイリー氏が優位という数字が出ていることもあります。

今後、インフレの問題や国際情勢で、バイデン政権の支持が下がると、民主党から離れた中間層がヘイリー氏に向かう可能性があるでしょう。

そのニッキー・ヘイリー氏は現在51歳。インドからの移民を両親にもち、保守的な南部サウスカロライナ州の下院議員、サウスカロライナ州で女性初の知事を務め、トランプ政権で国連大使に就任。知事時代は企業のビジネス支援と積極的な企業誘致を実施。2017年からの国連大使時代はトランプ大統領のアメリカ第一主義を支持し、北朝鮮への対応でロシアや中国と交渉、厳しい制裁決議を主導しました。基本は保守ですが人種問題ではトランプ氏と違った主張を持ち、またウクライナ支援の重要性を主張しアメリカ孤立主義には否定的。女性やマイノリティー、若者、そして「ウォール街」からの支持も増えています。

「世代交代」、そしてアメリカの「新しい時代」を開くことができるか。

これからの3か月間、ニッキー・ヘイリー氏に注目です。

「アーリー・ステーツの予備選挙」から3月5日の「スーパーチューズデー」で両党の大勢が明らかになり、決戦の「11月5日大統領選」に至ります。

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