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金利の上昇は株価に絶対悪か?長期視点で見たマーケットトレンド

2023年10月30日掲載

日銀の金融政策変更の時期、米国金利の動きが現在の株式相場に与える影響は大きく、市場関係者は毎月の当局からの発表を、固唾を飲んで注目しています。

定石は「金利の上昇は株価にマイナス影響」であってその流れが予想されています。

しかし「中長期的にみると違った見方もあるのではないか」という考えもあります。長いデフレが続き景気後退に苦しんだ日本にインフレが発生、31年ぶりに高水準の賃上げが実施され来年の春闘に向けてこの流れは加速しそうです。

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「賃金の上昇」は終わらない

労働環境では「2024年問題」と騒がれる「慢性的な人材不足」が起きています。建設業のコストは資材価格とともに人件費も大幅に増大、大阪万博や都心マンション価格高騰が顕著な例で、「人材不足」は資源や資材の高騰と並びインフレの要因となっています。

この傾向は収まる様子はなく、「賃金の上昇」は政府からの経済界への要望なくしても、企業は「せざるを得ない」状況です。

この相互に作用しあう「インフレ」と「賃金上昇」の関係。これにより起きる事象は、

消費者サイドから見ると、
「所得が増える」→「高くなった商品を購入」→「景気が好況」→「株高」「金利が上昇」。

企業サイドとしては、
「人件費」「資材・コスト」は上昇するが→「企業業績の向上」&「需要の増加」→「新たな設備投資」→「金利の上昇」→「株高」。

金利が上昇しても将来のための借り入れ意欲は高まります。当然銀行の業績は回復します。

このような「好循環」が起きる可能性は大です。

税収と社会保障費収入

また「国」を考えると、
「賃金上昇」→「インフレで高くなった商品が売れる」→「消費税収増」となります。

消費税の税率が10%のため、モノの価格が上がりそれが売れれば増税をしなくても税収増となります。これは安倍政権が残した功績かもしれません。

昨年度2022年度の国の税収は、一般会計で71兆1374億円、前年よりも4兆995億円増加で3年連続過去最高を更新しました。税収が70兆円を超えるのは初めてとのことです。

<内訳>

消費税 23兆800億円 1兆1900億円増
所得税 22兆5200億円 1兆1400億円増
法人税 14兆9400億円 1兆3000億円増

本年度も昨年を上回る税収増が予想されています。

また社会保障費も見逃せません。保険料は賃金に応じて求めるため「賃金の上昇」は国の「社会保障の保険料収入を押し上げる」ことになります。今回は定額減税の実施のようですが、国の財政に余裕がでることで、インフレが景気の腰を折らないための「財政出動」が可能になります。

世界の景気、マイナスの中国とプラスの米国

世界に眼を向けると「ピークチャイナ・中国の失速」というウィークポイントが上がります。

この数年、世界で起こる様々なピンチを中国の爆発的な成長がカバーし世界のマーケットを牽引してきました。この「中国の失速」は数年前なら致命的なマイナスでしたが、今はそれを補う米国の好況の継続が予想されます。

しかし、この2年間に及ぶロシアのウクライナ侵攻に加え、不幸にもパレスチナ・イスラエル紛争が起きてしまいこの行方は悲観的な見方があります。これらのリスクは世界景気の下振れ懸念です。

一方、戦争は「悪」という事実は譲れませんが、今まで数々の大不況を「戦争による特需」がカバーしてきたのも事実です。今回も米国の軍需は巨大になると思われます。現在米国では、イスラエルとウクライナを支援するなどとして1000億ドル以上(15兆円)の緊急予算を議会に要請しています。

長期視点で見る日本の経済

現在、日本のマーケットに影響を及ぼす可能性があるトピックスとして

1.日銀の金融政策変更
2.中東情勢の緊迫化
3.岸田政権の退陣などの政局不安

の3つが挙げられます。

「日銀の政策変更」は間違いなく、目前の一番の脅威は「パレスチナ・イスラエル問題」になります。この行方が大きな変数になる可能性はありますが、長期の視点で見ると、日本のマーケットトレンドは、長いデフレの時代・マイナスのスパイラルに陥っていた状況がやっと反転し、プラスのスパイラルに入ったといってもよいのはないでしょうか。

潮目が大きく変ったのは間違いなく、長期的には右肩上がりの成長を期待するのも間違いはないのかもしれません。

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