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進む日本の「デジタル赤字」。インバウンドを打ち消す資金流出
2024年2月26日掲載
2月8日に財務省が昨年2023年の国際収支統計を発表しました。
エネルギー資源の高騰が治まりインバウンドの復活もあり全体の貿易収支の赤字が縮小、サービス収支が増加、経常黒字は「20兆6295億円」2022年比+92.5%、倍増となりました。
好調インバウンドを打ち消す、もう1つのサービス収支
昨春から絶好調が続くインバウンド消費。中国人観光客の爆買いはなくとも復活。インバウンド関連の旅行収支は2022年の0.6兆円から急回復し「3.4兆円」となり2019年の2.7兆円をも上回りました。
しかし、同じサービス収支に属す「デジタル関連」の海外への支出が膨らみ続けています。2023年のデジタル関連の国際収支の赤字は前年2022年4.7兆から16%増え「5.5兆円」に拡大しました(10年前の2014年は2.1兆円)。
デジタル収支とは<コンピュータ、情報サービス、通信、コンサルティング、著作権使用料など>からなります。
この膨れ上がる「デジタル赤字」。その最大の原因は私たちが日常使うデジタルサービスのほとんどを米巨大ITに依存しているからです。
B to Bでは、企業システムの主流のプラットフォームとなった「クラウドサービス」やソフトウエア、Bto C分野では「コンテンツ配信」や「Web広告」などの「デジタルサービス」の支出のほとんどが海外企業へ流れていきます。
気が付けばGAFA
まずクラウドサービスは、AWS(Amazon Web Service)、Microsoft Azure、Googleクラウド、現在の企業や官公庁の情報システムのほとんどはこの3社のクラウドのどれかを使用しています。もう以前のように自前でNECや富士通、東芝などのサーバーを持つ企業はほぼなくなりました。
また私たちが片時も手放せなくなってしまったスマートフォン(AppleかAndroid)。
そこで利用するサービスはGoogleで、SNSではMetaのInstagramやFacebook、そして旧TwitterのX、TikTok。(LINEだけは例外)。広告で発生する収入のほとんどをGAFAに支払っていることになります
そしてコンテンツ配信。音楽はApple MusicかAmazon Prime、Spotify。映画やドラマ、はNetflix、Amazon Prime Video、Disney+、Apple TV+、Hulu。スポーツはDAZN。この分野の外資系のシェアは6割を超えます。
高度サービスへの転換を逃した日本
現在のデジタライゼーションにより音楽を聴くのにCDを買う必要はなくなり、TSUTAYAのレンタルビデオ店は閉店、テレビの録画をしないのでDVDレコーダーはいらない。企業ではITシステムのコンピュータ、メインフレームやPCサーバーは不要になりました。そして現在のAI、ChatGPTなどの生成AIの利用拡大でデジタルサービスの海外依存はますます高まり、今後もデジタル赤字は拡大し続けるのは確実です。
日本は20世紀後半、製造業分野で大きなアドバンテージをもち、多額の外貨を稼ぐ経済大国となりました。そこから約半世紀、デジタルサービス分野で海外に大きく出遅れました。好調だった製造業に過度に依存、高度サービス産業を創造できず、グローバルの流れの中で大きなビハインドとなりました。同様の事態が、今後自動車産業でも起こる可能性もあります。
国内でイノベーティブなビジネスが生まれない原因をしっかりと把握し、今からでも新たなサービスのインキュベーションが起こる環境整備が、10年20年後の日本のために急務と考えます。
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