GLOBAL&TREND
2025年の「不測の事態・予期せぬ出来事とリスク」に備える
2025年01月09日掲載
再来週の月曜、1月20日、ついにアメリカ合衆国第47代大統領にトランプ氏が就任します。4年ぶりの再登板になります。
昨年11月の大統領選勝利後、世界は開幕するトランプ劇場第二幕を固唾を飲んで待っています。その観客になっている日本も今年の夏に参議院選を控えています。
そこでアメリカと日本で2025年に「起こりえること」を考えてみました。
可能性は低いかもしれませんが「起こりえること」「リスク」を予想・想像しそれに備えておくことは、万が一、それに近いことが起きた際、素早く正しい行動をとることができます。
ここではそのいくつかを紹介します。
●ロシア・ウクライナの停戦、世界的インフレが崩れる
トランプ氏が、公約である「関税の引上げ」を実行した場合、輸入品の物価は上昇、また移民への制限が行われれば人件費は上昇し、インフレが再加速することが予想され米連邦準備理事会(FRB)が「利下げを止める」という見方も出てきています。
またこの3年間、アメリカの好況・インフレを支えた1つの柱がロシアとウクライナの戦争です。アメリカはウクライナに向けた武器などの莫大な金額の支援を実施、武器・軍装品を製造し提供、自国の軍事産業に巨額の資金を流しました。これは一種の「財政出動」です。
トランプ次期大統領はこの戦争の早期終結を約束しています。その停戦へのシナリオは、ロシアにウクライナの4州を譲渡、見返りにウクライナはNATOへ加盟というもののようで、成功すれば3年及んだ戦争が終わります。が、これは同時に続いた「財政出動」がストップすることになり経済的変動は大きなものになると思われます。
世界に遅れてやっとインフレにたどり着いた日本への影響も否定はできません。その場合FRBそして日銀も舵取りが非常に難しくなりそうです。
●高まるイーロン・マスクの存在感
トランプ氏は今回、イーロン・マスク氏という類まれなビジネスセンスを持つパートナーを従えて大統領に就任します。テスラ、スペースX、そしてXという先端企業を率いる彼の言動に注目する必要があります。EV、宇宙、AI、彼が次に狙うフィールドは?
天才マスク氏の影響力は非常に大きなものになります。2人のビジネスマンが世界にビッグディールを仕掛ける可能性があります。
●右に傾いていく世界、ドイツの行方
世界の先進国の体制は「中道から左派」が通常でした。しかしここ数年、ヨーロッパの国々が「右」に傾き始めました。既にオランダ、イタリア、フランス、ハンガリー、オーストリアで右派ポピュリスト政党が台頭、そして大国のドイツにもその波が襲っています。
ショルツ首相を不信任としたドイツは、来月2月23日に実施予定の解散総選挙を控え、右派政党の「ドイツのための選択肢=AfD」が勢いを強めています。AfDはドイツのEUからの離脱を訴えており、もし多数となると非常に深刻な事態に発展する可能性があります。
また、イーロン・マスク氏がAfDへの支持を表明しているとも言われ、世界に一気に保護主義に向かう危惧が出てきています。
●日米安全保障は盤石か
アメリカにとって外交上の大きな脅威は、軍事的にも経済的にも引き続き「中国」になるでしょう。日本は同盟国として、また防波堤として重要な役割を担い引き続き「漁夫の利」を得ると思われます。
一方でトランプ氏の「自国第一主義」により厳しい対応を受ける可能性も大です。特に今回の「USスチール」の騒動を見ると、日本が同盟国であってもいざとなれば「かまってられない」というのがアメリカの本音でしょう。
またこの「USスチール」買収をめぐる攻防ですが、買収中止の決定「NO」をバイデン現大統領が出したことが、「前の決定を嫌い覆すこと」を好むトランプ氏により一転して「OK」になるシナリオも小さいながら残っています。バイデン氏が結論を出さず1月20日以降にトランプ氏が「NO」とする場合、それは絶望的でした。
一方、国内では石破首相がバランスをとりながらの政権運営を続けていきます。
●見えない外交政策
石破首相は、就任後の11月、アメリカより先に習近平氏と会談を行うなど、中国に接近しています。しかし石破氏の経歴や今までの実績を見ると、外交・海外との接点は少なく内政がほとんどで全体的な外交ヴィジョンが見えてきません。各国はトランプ詣に力を入れていますが日本が遅れをとってしまったのは事実です。
一説には、欧米に偏った外交ではなくアジア諸国との共存、中国との関係も良好に保つべきという大局的な意見もあります。また1月7日の会見での「USスチール買収中止」を決めたアメリカへの「厳しい発言」を評価する声もありますが、政権発足から3か月間の行動が今後世界との関係にどう影響していくのか注視する必要があります。
●石破政権が瓦解する
1月24日には通常国会が召集され「来年度予算案」めぐる攻防が始まります。まずは少数与党としてこの関門を乗り切れるかが、大きな山となります。
そして7月の参議院選挙で、トータルで与党が過半数を獲れない場合、新たな連立を組むのか、あるいは再度の政権交代が起こるのか、これからの半年間、予断を許さない展開となりそうです。
参議院選は直前の東京都議選の結果がそのまま反映すると言われていますが、通常国会の運営や世論を見て自民党内に「勝てない」というマイナスのムードが高まる場合「石破降ろし」が始まり、囁かれている「衆参同時選挙」の可能性も再熱するでしょう。
しかしその時、自民党自体が分裂する可能性がでてくるかもしれません。このままではどうしても勝てないと判断した議員が飛びだし新党をつくる、例えば、前回の総選挙で冷遇された「100人を超える安倍派」、彼らが袂を分かつこともあり得ないことではありません。昨年の政治資金の問題から厳しい視線はありますが本格的な「右派保守政党」が誕生するというのもあるかもしれません。「年末の安倍昭恵氏とトランプ氏との面会が布石だった」というのは出来すぎたシナリオですが。
昨年12月の日銀の金融政策決定会合で利上げを見送った際の植田総裁は「来年の春闘のモメンタムをみたい。もうワンノッチほしい」とともに「トランプ政権の経済政策を巡る不確実性が大きくその影響を見極める必要がある」と発言しました。この発言がおそらく世界の経済・金融関係者の心を代弁していると考えます。
2025年がスタートしましたがおそらく世界的に激動の年になると思われます。
まずは1月20日。中々予測がつかない年始になりました。
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