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年末年始「リベンジ消費」が好調の日本、「ハイブランド」のパーティーが終わった欧州
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2023年12月20日掲載
早くも12月下旬、ほぼ4年ぶりにソーシャルディスタンスのない年末年始になりました。
街はイルミネーションが点灯、クリスマスの飾りつけであふれ、週末はショッパー(お店のショッピングバッグ)を手にする人がいっぱいです。「リベンジ消費」は全開のようです。
「10月の景気動向指数」速報値は3カ月連続で前月を上回り、民間企業の冬のボーナスの平均支給額は2.1~2.5%増加とされています。これらを受け、まず旅行業、JTBの見通しでは年末年始の1人あたりの旅行費用は国内旅行で41,000円(前年比+4,000円)と過去最高。HISでは海外旅行の予約者数が昨年の2.6倍とのことです。
また小売業は今がまさに最大の商戦期。三越伊勢丹は12月上旬の売上高が2桁増ペースで年末商戦は好調な滑り出し。大丸松坂屋百貨店は12月1~7日の全店売上高が9%増と数年ぶり、数十年ぶり?の活況となっています。特に高額消費財、宝飾品・時計、「ハイブランド」のバッグやアクセサリーが絶好調とのこと。もちろん、インバウンドの急増とあわさった未曽有の円安で外国人の後押もありますが。
世界を魅了するハイブランド
世界統一の販売戦略・イメージ戦略で展開されているハイブランドの売上動向は、その国の経済指標となり、またハイブランド製品の価格は世界的なインフレを測る一つの尺度になります。
ここではまず、ハイブランドがどのグループに属しているかを紹介します。
3大グループは「LVMHグループ」「ケリング・グループ」「リシュモン・グループ」です。
■LVMHグループ(主なブランド)
- ルイ・ヴィトン
- クリスチャン・ディオール
- ロエベ
- セリーヌ
- ジバンシー
- フェンディ
- ブルガリ
- ティファニー
- ウブロ
- モエ・エ・シャンドン
- ドンペリニヨン
- ヘネシー
- DFS(免税店)
2019年にティファニーを約162億ドル(約1兆6800億円)で買収したのは大きなインパクトでした。
■ケリング・グループ
- グッチ
- サン・ローラン
- ボッテガ・ヴェネタ
- バレンシアガ
- アレキサンダー・マックィーン
- ブリオーニ
- ブシュロン
■リシュモン・グループ
- カルティエ
- ヴァンクリーフ&アーペル
- ピアジェ
- A.ランゲ&ゾーネ
- オフィチーネ・パネライ
- IWC
- ボーム&メルシエ
- ダンヒル
- ランセル
■上記以外の「独立系の主なブランド」
- シャネル
- エルメス
- ラルフローレン
- バーバリー
- アルマーニ
- モンクレール
- ドルチェ&ガッバーナ
- ヴァレンティノ
- ロレックス
- パテックフィリップ
- オーデマピゲ
高騰する価格、ハイブランド・パ―ティは終わったか?
そしてこれらのハイブランドは、最近の短期間で価格改定を続け、その値上げ額も元が高いため数万円以上になりました。物によってはコロナ前の2倍近い商品もあります。
この原因、1つ目は「原材料費の高騰」バッグでは使用する上質な皮の価格の値上り。
2つ目は「需供バランス」グローバルサウスの急成長で特にアジア地域で需要が急増。
3つ目は「ブランドイメージのコントロール」供給は生産力の問題もありますが、ブランドイメージを保つために流通量のコントロールと、価格の調整で需要を抑え、バランスをとることもしています。
そしてハイブランドは、昨年からのリバウンド消費とグローバルサウスの成長の2つの要因で、ヨーロッパの景気回復とインフレの象徴となり、昨年2022年の12月から2023年の5月~7月にかけ株価も急上昇となりました。
しかし風向きは秋に急転。9月頭に「リシュモン会長、インフレによる需要下押しに言及」との報道で9月6日のヨーロッパの株式市場ではハイブランド銘柄が売り込まれました。
具体的には、
ケリングG:株価は3月には600€(EUR)に迫りましたが11月入ると一時400€を割り込み20年以来の安値。
LVMH:昨年12月の673€が4月には900€となりましたが10月には660€。現在も740€前後で推移。
リシュモンG:2023年年末の116 SCHが5月には155 SCHをつけましたが11月には100 SCHに下落。
一方、独立計のエルメスは 1万ドル以上のバッグが相変わらずの予約待ち状態で、7月終わりの2,000€から10月に1,650€に下げましたが 12月にはまた2000€を回復。
「業界の二極化」といわれますが、多くのハイブランドはピークアウトが顕著となっています。
理由は「エントリーレベル価格帯の消費が縮小」「中国富裕層の消費鈍化」は「中東情勢緊迫化に伴う新たな地政学リスク」がありますが、もう1つ「価格の上昇に消費者が追いつけない」「そんなに高くて誰が買う」という声が大きくなっています。
欧米に15か月遅れの日本
「リベンジ消費」に煽られインフレ・価格の上昇、それについていけなくなる消費者。
ヨーロッパはインフレと景気後退が同時に進む「スタグフレーション」の様相が強くなってきたといわれています。ユーロ圏のGDP成長率は7?9月期にマイナスになり、9月の消費者物価指数の上昇率は、ユーロ圏4.3%・イギリスは6.7%と、2~3%台のアメリカや日本を上回っています。
日本は「コロナの行動制限解除」が欧米より1年3か月遅くなりました。
つまり日本は15か月の周回遅れをしていると言ってもよいでしょう。欧米の推移はとてもよい見本になります。欧米は行動制限の解除後、消費に供給が追いつかず、インフレに見まわれた結果、それを抑えるための急激な利上げを実施しました。そしてアメリカの利上げはほぼ2年を経た先々週にやっと止まりました。
現在の物価の状況を見ると、日本もインフレが続き金利が上昇というシナリオが当然のように成り立ちます。そして今の欧米の状況が「15か月後の日本」となる可能性は高い。
しかし、備える時間はまだ十分にあります。
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