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トランプ関税に負けない「日本の本質的な価値」・漁夫の利を得るのは日本
2025年4月3日掲載
トランプ関税に世界は揺れています。先ほどアメリカ東部時間2日午後4時(日本時間3日午前5時)、トランプ大統領はホワイトハウスで世界各国からの輸入品に「相互関税」をかけると発表、各国に一律10%の関税をかけ、その上、国ごとの税率を上乗せし、日本には合計で24%の追加関税という厳しいものになりました。日本のマーケットはすぐさま反応、これにより日本はもちろん世界の景気に大きな打撃を与えそうです。
報道の通り、最も影響を受けるのは自動車産業。自動車には25%の追加関税となり、輸入車のアメリカ国内価格は上昇。価格的にはアメリカ国内での生産車が圧倒的に有利になります。
しかし、現在、製造業のサプライチェーンは世界規模で構築が完了しており、数々の部品類はアメリカ国外で生産されており、この部品への追加関税はアメリカ車にも影響も及ぼすことになります。
トランプ氏は「アメリカの製造業の復活」を目指していますが、世界で進んだ針を戻すことが出来るのか?無謀ともいえる戦いを始めました。
テクノロジーで世界をリード、一方で空洞化する製造業
IBMからMicrosoft、Appleいった1980年代から2000年までのコンピュータやPC。インターネットを産みだし、スマートフォンを開発。GAFAと呼ばれるプラットフォーム群、そして現在のAI。アメリカは、テクノロジーとソフトウエアの圧倒的な力で、世界をリードしています。また自動車産業の盟主の座が、フォードからテスラに移ったように、製造業の核心であった自動車産業でさえソフトウエアの世界に引き込みました。
この推進力となったのは、アメリカが誇る一流大学出身の頭脳です。彼らが創り出す最先端のテクノロジーを基盤としたビジネスは、莫大な利益をアメリカにもたらしています。
その一方で製造業は、より安いコストを探し、調達先を世界に求め、中国や東南アジア、グローバルサウスを裾野とした巨大サプライチェーンが構築されています。
優秀な人材はソフトウエア産業に回り、過去アメリカを支えた製造業は衰退、これは至極当然の結果です。
3月31日の日本経済新聞の記事「軍艦を造れない米製造業 中国と大差、戦略見直し急務に」にあるように、もはやアメリカは自国だけでは船も作れない状況になっています。
また、アメリカで販売される車のうち米国製のエンジンは20%弱、エンジンと変速機の50%は日本とドイツの製造で、アメリカの自動車産業は他地域から輸入した部品を組み立てるだけの工場に変わってしまったともいわれています。この製造業の空洞化を元に戻すのは容易ではありません。
では一方の日本はどうでしょうか。
日本は自国の本質的な強みにフォーカスしていくべきと考えます。
日本の本質的な強み「ものづくり」
日本が戦後、製造業によって飛躍的に回復したのは周知のことです。「加工貿易」という言葉の通り、海外から原料や部品を輸入して加工し工業製品や半製品を輸出し大きな発展を遂げました。
そして日本には多数の中小規模の工場が存在し、熟練の技術と、創意工夫から産み出される精緻で丁寧なモノづくりは、非常に高い付加価値を持ち、他の国には決して真似はできまません。また製造業には「信頼とチ―ムワーク」が求められ、日本人の特性をして、製造業が発展するのは不思議なことではありません。
労働集約型の製造業はひたすら低価格を求めるため、サプライチェーンは日本を避け、中国に生産国を移し、現在はそのサプライチェーンも崩れ、拠点は中国から東南アジアに移っています。しかし世界的に景気が回復してきた現在、高価格でも付加価値の高い工業製品へのニーズが高まり、2極化が進み、また円安により海外から安く購入ができることもあり、世界で「日本の技術力」が再注目されています。
ソフトウエアやAIに代表される第4次産業は、知識集約型で巨額の開発費が必要なため、アメリカに対抗するのは得策ではなく、今後日本が戦略的に注力する分野はやはり「製造業」で、「ものを作れなくなったアメリカ」が中国と対立する中、経済安保の見地からも日本の工業製品への依存は高まると考えます。
今後、日本とアメリカは争うことなく相互補完関係を構築すれば、地政学的な位置から、も日本が中国とアメリカの間に入り、例えば「アメリカのソフトウエアやAIを搭載し,汎用的なパーツは中国や東南アジアから調達、コアとなる精密な部品や組み立て製造は日本」という効率的な分業体制が実現できます。
ただ日本の製造業にも大きな問題が残ります。中小の工場で働く「熟練技術者」の高齢化、技術継承をどうしていくか、この課題の解決は急務で時間は待ってはくれません。
しかし、最近こうした製造業「ものづくり日本」への若い世代からの注目も高くなってきています。また「技術の継承」の部分にAIの活用もあるかと考えます。
この課題については、国家的な戦略を立て「日本の本質的な強み」をしっかりと捉えた取り組みが必要です。
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