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参院選の結果は想定内? この次の「日本のチェックポイント」は
2025年7月22日掲載
猛暑の中、行われた参議院議員選挙。海の日が絡む3連休の中日の実施、という異例の日程で、期日前投票は20%を超え、日曜の日中は暑さのためか投票率は高くはなかったですが、夕方から挽回し58.51%と予想通り前回より上昇、今回の選挙の注目度の高さが証明されました。
そして日曜の20時の投票終了に合わせ、マスコミ各社は「与党の大惨敗」、「与党で40議席を割る」などと一斉に報道、非常に大きなインパクトを与えましたが、開票が進むに連れ徐々にトーンダウン、日付が変わったころには選挙前の予想通りの「与党で50議席に届かず」に落ち着きました。
結果は自民・公明両党で47議席。SNSが大きな力を発揮し10代~30代の無党派層の支持を得た参政党や国民民主党が大 きく議席数を増やしましたが、普通なら与党批判票の受け皿となる野党第一党の立憲民主党が、反自民の大きな流れの中、議席数を全く増やせず与党に決定的なダメージを与えることはできませんでした。
これで、今年の一つのイベントが終了しました。
結果は想定の範囲で、この数か月の不透明感が消え、今までの連続性が担保されました。
選挙の動向を注視し大きなポジションをとれなかった投資家はやっと動けるようになり、22日の日本のマ―ケットは活発化、株価は4万円を一時回復しました。
迫る「25%の相互関税」
この参議院議員選挙という最初のチェックポイントは、どうにか通過しましたが、この次には、石破氏が続投の理由としているアメリカとの関税交渉の期限「25%の相互関税の発動」が8月1日に控えています。最近ではトランプ氏のTACO理論で先送りが相次ぎ恐怖感が薄れていますが、政府がこの難局を乗り切れるか、それにより自動車産業を筆頭として企業に大きな影響を及ぼします。この点が大注目になります。
政権運営の体制はどうなる
その後の注目は、今後の政権運営体制に移ります。衆参ともに与党が過半数を得ていないという今までにない状況下、与党政権がどのように政権運営をしていくのか。大きく次の3つが考えられます。1つは「石破首相が退陣、自民党から新たな首相を選出」
2つ目は「与党が野党を連立政権に取り込み、もしかすると自民党以外から首班指名」
最後は「13年振りの政権交代」
現時点で石破首相は続投の意向ですが、7月31日には自民党の「両院議員懇談会」が開催されます。麻生太郎氏などの自 民の重鎮が続投を認めない姿勢を示しており、翌日の「相互関税の発動」を控えてですが、石破氏の辞任の可能性もあり、ここまでには流れが決まると思われます。
消費税減税の行方は、秋の臨時国会
そして今回の選挙の大きな争点となった「給付」か「減税」かの議論。秋の臨時国会の焦点になると思われますが「減税」を唱える党が大きく支持されたことにより、経済政策面では「積極財政」の傾向が強まることが予想されます。インフレが進行する中、個人消費の低迷を防ぎ、景気を高めるためには「現金給付」よりも「消費税減税」の方が効果を発揮します。その反面「消費税減税」の方向になれば、長期国債の利回りは上昇となり、この「積極財政」は国の債務を増やして財政の信用の低下を招き、円安を一層助長すると考えられます。
もしかすると秋の臨時国会では、この「消費税減税」を巡り、国民の民意を問う衆議院の解散があるかもしれません。自 民党と立憲民主党がこれを選択するには相当の勇気が必要ですが。
繰り返しになりますが、今回の選挙では「予想の範囲」で、大きな体制変更などの変化は起きず、日本の世界におけるポジションに大きな影響はなく、連続性は保たれました。
しかし今回の争点では、トランプ氏との相互関税を巡る日本のスタンスや、世界が緊迫度を高めている中での日本の外交政策や防衛などについては、ほとんど問われませんでした。
この後の日本の政権運営が大きく注目されます。国内のインフレ、物価高対策だけでなく、世界で起きている武力紛争や経済摩擦などに対する外交面での日本のプレゼンスも確固としたものにしなければならず、それを実行していく体制の構築が非常に重要です。
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