【もくじ】
◇2012年6月の完全失業率、2ヶ月連続改善
◇焦点:米国の雇用情勢が改善
◇参考銘柄
◇ トピックス:欧州中央銀行(ECB)の責務
◇ファイナンスメモ
2012年6月の完全失業率、2ヶ月連続改善
総務省が発表した2012年6月の完全失業率(季節調整値)は、前月比0.1ポイント低下の4.3%だった。2ヶ月連続で改善、9ヶ月ぶりの低水準。復興需要やエコカー補助金などの政策効果による景気の持ち直しを背景に、雇用環境が緩やかな改善傾向にあるとみられる。完全失業率は15歳以上の働く意思がある「労働力人口」に占める完全失業者の割合を示す。男女別の失業率は、男性が前月と同じ4.5%、女性が0.3ポイント改善し4.0%で6ヶ月ぶりの低水準だった。
完全失業者数(原数値)は、前年同月比26万人減少の288万人。25ヶ月連続の減少。求職理由別にみると、「勤め先都合」が11万人減少し、「自己都合」も4万人減少した。
就業者数(原数値)は、前年同月比6万人減少の6304万人とどまり、7ヶ月連続で減少した。就業者数が減少したのは高齢化による影響とみられる。産業別にみると、「卸売業、小売業」、「運輸業、郵便業」などが減少した一方、「医療、福祉」などが増加した。
焦点:米国の雇用情勢が改善
米国労働省が8月3日に発表した7月の雇用統計によると、失業率が前月比0.1ポイント上昇の8.3%となった一方、非農業部門の雇用者数が同16万3千人の増加となり、事前予想の平均値(同約10万人)を上回る結果となった。非農業部門雇用者数の増加は4月から6月まで3カ月連続で同10万人を下回っていたため、米国景気の減速懸念から米FRB(連邦準備理事会)の追加金融緩和観測へとつながっていたが、予想を上回る改善が示されたことで、今後FRBがどのような判断を下すかが注目されるものと思われる。次回のFOMC(連邦公開市場委員会)は9月12日から13日に予定されており、9月7日に発表予定の8月の雇用統計で非農業部門雇用者数の増加が7月と同水準になれば、追加金融緩和「QE3」に踏み切る可能性が低くなるとする見方がある一方、7月の増加幅では追加金融緩和を見送るには不十分とする見方もあり、現時点では市場関係者の見方が分かれているのが現状である。
米国においては、GDP(国内総生産)の7割超を個人消費が占めており、雇用の改善は個人消費の増加を通じて生産の増加につながる好循環を生み出すこととなる。非農業部門雇用者数の増加が、力強さに欠ける水準ながら2010年10月以来増加を続けているため、米国の雇用情勢は着実に改善しているとの見方ができる一方、安定的な改善のめどとされている20万人に及ばない状況が続いていることも事実で、これが追加金融緩和観測へとつながっているものと思われる。ただ、米国ではこのところ、熱波や干ばつなどの影響から穀物価格が高騰、これがインフレにつながるリスクが意識されており、FRBの舵取りに注目が集まるものと思われる。
参考銘柄
大豊工業(6470)
◇トヨタ系の自動車部品メーカー
トヨタ系自動車部品メーカーで、エンジン、駆動装置向けに軸受、ダイカスト、ガスケットなどを供給するほか、自動車・自動車部品用製造設備も手掛ける。売上の大半が自動車関連で、客先別ではトヨタ自動車およびトヨタグループ向けが約7割を占める。
2013年3月期の連結業績は、トヨタ自動車を中心に自動車生産が拡大する見込みであるほか、トヨタグループ以外の自動車メーカー向けが順調に拡大する見込みで、増収2ケタ増益となる見通しである。前期以降、積極的な設備投資を実施しているため、減価償却費の増加が見込まれるものの、増収効果や合理化効果などで吸収する見通しである。配当については連結配当性向30%を目指す方針に基づいて年間配当を前年同期比2円増の24円とする方針である(中間、期末の配分は未定)。
同社は現在、中期経営計画「VISION2015」を推進しており、自動車用すべり軸受分野で世界NO.1の実現、非軸受分野でトップブランドの確立と環境・エネルギー・安全等の課題解決に寄与する新商品の開発・提供、工機分野でグループの総合力を生かした型・設備・製造システム商品の確立などに取り組んでいる。足元ではエコカーや低価格車向け樹脂コート軸受の開発や工程を短縮した新工法、めっき製法の導入、グローバルでの生産能力増強などを進めており、今後の動向が注目されるものと思われる。
ネットワンシステムズ(7518)
◇ネットワーク専業トップ
三菱商事系のネットワーク専業会社で、幅広いネットワーク関連製品を取り扱っており、日本最高水準の技術力と製品調達力を持つ。ネットワーク機器の世界首位である米国シスコシステムズ社製品の日本国内販売でも高い実績を誇り、関係も緊密(同社の取扱製品のおよそ50%がシスコ製品)。さらに、ネットワークシステムの構築、保守など総合的なサービスを得意としている。NTTやドコモが主要顧客。
◇通信キャリアによるネットワーク構築需要
好業績の背景には、通信事業者によるネットワーク構築需要がある。スマートフォンやタブレットPCの普及に伴うデータ通信量の急増に対応するため、各通信キャリアは設備を活発化。加えて、新たな高速通信規格であるLTEのインフラが進めば、今後の受注増につながるとみられる。また、大企業によるシステム構築も業績の牽引役になると思われる。
森トラスト総合リート投資法人(8961)
◇森トラストを主要スポンサーとする総合型REIT
森トラストを主要スポンサーとする上場不動産投資信託(REIT)で、投資対象を東京都心部のオフィスビルを中核とする総合型REITである。2012年7月12日現在の保有物件は14件、取得総額2878億円、地域別では東京都心部が75%、用途別ではオフィスが77%を占める。
2012年9月期および2013年3月期の運用状況の予想は、2012年3月31日現在で保有していた13物件に異動等がないこと、発行済投資口数に変動等がないこと、2013年3月期については内部留保の一部を取り崩すなどの前提で1口当たり分配金が18800円、17500円となる見通しであるが、2012年7月12日で1物件を取得しており、物件数は14件となっている。
トピックス
欧州中央銀行(ECB)の責務
7月5日のECB理事会で市中銀行がECBへ預ける流動性預金(LDEPO)の付利が0.25%からゼロへ引き下げが決定され7月11日より実施されましたが、7月10日に約8,000億ユーロ以上あった残高は翌11日には約3,200億ユーロと約4,800億ユーロが流出となり、その後も流出が続いています。過去2回にわたるECBによる3年物の資金供給オペによる資金のほとんどがLDEPOに預けられていたものであり、付利のゼロによりユーロ圏のAAA格の国債へLDEPOから資金が移動したためドイツはもとより、オランダやフィンランドの2年国債の利回りがマイナスとなり、AA格のフランス・ベルギー・オーストリアの2年国債の利回りは揃って過去最低水準を更新しました。ユーロ圏主要各国の債務償還合計額は月別では7月が今年の最高水準でした。国別でもAAA格のドイツ・オランダは今年の最高であり、AA格のフランス・オーストリアも今年のほぼ最高水準でした。LDEPOの資金は、直接的にはスペイン・イタリアの国債入札には回っていないと思われますが、ユーロ圏全体での資金需要をLDEPOからの流出が緩和した結果、間接的にスペイン・イタリアの国債の利回りも押さえられたと推察されます。ユーロ圏全体での資金需要が強いなかでスペイン10年国債の利回りが7%超えとなるなか、7月20日にEU財務相電話会議が行われ、1,000億ユーロ規模のスペインの銀行救済が最終承認されました。同日フィンランド議会もスペインの銀行支援を承認しました。しかし、ESM(欧州安定メカニズム)の稼動は9月のドイツ裁判所の判断待ちであることや、銀行への直接資本注入はユーロ圏の銀行監督一元化実現後であることから、7月24日にはスペインの10年国債利回りは終値で7.5%超えとなりました。
7月26日にはドラギECB総裁が講演会で「これらソブリン債のプレミアムが金融政策の効果浸透の妨げとなっている限り、高利回りの問題はECBの責務の範囲内にある。」と発言したのに続き、7月27日には独仏首脳が「ユーロを守るためならあらゆることをする」と表明し、続く7月28日には独伊首脳が「両国はユーロ防衛であらゆる措置を取ることで合意」と声明を発表し、さらに7月31日に仏伊首脳が「両国はユーロを守るため、あらゆる措置を講ずる決意」と声明を発表しています。連日の声明で7月24日にユーロ導入以来の最高水準となったスペイン10年国債の利回りは1%程度の低下となりました。
8月2日のECB理事会での声明文に「安定基金が稼動すればECBも市場介入を検討する」とあり、市場参加者はこの部分を嫌気したため再びスペイン10年国債利回りは7%台乗せとなりました。しかし、声明文にはEFSF(欧州金融安定ファシリティ)の買入がなければ、SMP(ECBによる国債買入プログラム)再稼動を絶対行わないとまではしていないため、緊急時にはSMP再稼動に踏み切る可能性もあると思われます。また、LDEPOの残高が約3,000億ユーロまで減少したため、第3回の3年物の資金供給オペが行われる可能性もあると思われます。
S&Pは8月1日にスペインの格付けを据え置きとし、基本的シナリオとしてスペインが「欧州のパートナーと欧州中央銀行から金融を含めた支援を受け続ける」と予想しています。
国際部 20120807
ファイナンスメモ
■株式分割
コード | 市場 | 銘柄 | 割当日 | 割当率 |
---|---|---|---|---|
2196 | 東マ | エスクリ | 8/31 | 1→3 |
2379 | 東マ | ディップ | 8/31 | 1→100 |
3085 | Jス | アークランドサービス | 8/31 | 1→3 |
7777 | Jグ | スリー・ディー・マトリックス | 8/31 | 1→2 |
7847 | Jス | グラファイトデザイン | 8/31 | 1→100 |
2132 | Jグ | アイレップ | 9/30 | 1→500 |
2176 | Jス | イナリサーチ | 9/30 | 1→100 |
2374 | Jス | セントケア・ホールディングス | 9/30 | 1→100 |
2413 | 東1 | エムスリー | 9/30 | 1→3 |
2656 | Jス | ベクター | 9/30 | 1→100 |
2928 | 札アン | 健康コーポレーション | 9/30 | 1→100 |
3069 | Jス | アスラポート・ダイニング | 9/30 | 1→100 |
3620 | 東1 | デジタルハーツ | 9/30 | 1→2 |
3640 | 東2 | 電算 | 9/30 | 1→2 |
3738 | 東1 | ティーガイア | 9/30 | 1→200 |
3768 | Jス | リスクモンスター | 9/30 | 1→100 |
4239 | Jス | ポラテクノ | 9/30 | 1→200 |
7837 | Jス | アールシーコア | 9/30 | 1→100 |
8473 | 東1 | SBIホールディングス | 9/30 | 1→10 |
9022 | 東1 | 東海旅客鉄道 | 9/30 | 1→100 |
9404 | 東1 | 日本テレビ放送網 | 9/30 | 1→10 |
9409 | 東1 | テレビ朝日 | 9/30 | 1→100 |
9433 | 東1 | KDDI | 9/30 | 1→100 |
9436 | Jス | 沖縄セルラー電話 | 9/30 | 1→100 |
2459 | 東マ | アウンコンサルティング | 11/30 | 1→100 |
6888 | Jス | アクモス | 6/30 | 1→100 |
■新規上場予定企業
コード | 市場 | 銘柄 |
公募 株式数 |
売出 株式数 |
OA |
ブックビル 期間 |
上場日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9201 | 東証 | 日本航空 | - | 175,000,000株 | - | 8/31-9/7 | 9/19 |
※いずれも売出株式数にOA(オーバーアロットメント)は含まず。
■公募・売出し
コード | 市場 | 銘柄 | 申込期間 | 公募株数 | 売出株数 | 払込日 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
7646 | Jス | PLANT | 8/8-9 | 1,000,000株 | 360,000株 | 8/17 | 583円 |
OA200,000株 |
OAはオーバーアロットメント。
■減資・株式併合
コード | 市場 | 銘柄 | 詳細 |
---|---|---|---|
3318 | Jス |
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8月17日付(予定)で資本金29億2415万9982円から28億7415万9982円減少。(新資本金は5千万円) |
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石井表記 | 8月31日付(予定)で資本金39億2413万3500円(優先株式発行による増資後)から36億2413万3500円減少。(新資本金は3億円) |
1890 | 東1 | 東洋建設 | 10月1日付(予定)で普通株式5株を1株に併合(新発行済株式数8007万1183株)。 |
1929 | 東1 | 日特建設 | 10月1日付(予定)で普通株式4株を1株に併合(新発行済株式数4391万9291株)。 |
5009 | 東1 | 富士興産 | 10月1日付(予定)で普通株式10株を1株に併合(新発行済株式数874万3907株)。 |
6993 | 東2 | 森電機 | 10月1日付(予定)で普通株式10株を1株に併合(新発行済株式数3421万7616株)。 |
8014 | 東1 | 蝶理 | 10月1日付(予定)で普通株式、第四回優先株式10株を1株に併合(新発行済株式数・普通株式2501万9981株、優先株式6万株)。 |
8803 | 東1 | 平和不動産 | 10月1日付(予定)で普通株式5株を1株に併合(新発行済株式数4005万9996株)。 |
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