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ホルムズ海峡、振り回される世界、出口はいつ見つかる
2026年4月6日掲載

アメリカとイスラエルが起こした戦争が世界を攪乱し、マーケットはエレベータのような動きをし、世界経済に大きな影響を及ぼしています。
しばらくの間、先行きはどちらに転ぶか読めず、明日には終わっている可能性もありますが、戦闘の拡大、長期化、いつもの「トランプの不確実性」に振り回されています。
今回のイラク攻撃。ある程度、予想されてはいましたが、イスラエル単独での、前回同様に施設へのピンポイント攻撃でイランの反撃が自制される範囲のものと考えていました。
しかし、イスラエルの情報で、核兵器の完成が目前に迫り、長距離ミサイルの配備も進み「悪の枢軸国家が北朝鮮に続き核保有国」なることを阻止するためは「体制転換」が不可欠と考え、今回のアメリカを巻き込んだ攻撃に発展したと考えられています。
イランは、1935年に国名を「イラン」へ変更しましたが、2000年の歴史を持つ「ペルシャ帝国」流れを組む伝統ある国家。シーア派が多数の国家の体制転換は今回の「北風」の戦法で、一層難しくなったと考えます。
そもそもこの軍事行動、イスラエルの目的は明確ですが、アメリカは大義を見つけづらく、その点が現在の不安定さの要因となっています。ネットで囁かれているよう、おそらくはイスラエルから「体制転換は簡単、ハメネイ氏が排除されれば、次は親米政権が誕生」という情報があったと考えます。
また、攻撃開始時から出口戦略が取りざたされてましたが、イランの対応を見誤ったようで、目論見が外れたトランプ氏の発言は毎日変わり続けています。イスラエルの戦争に踏み込んだアメリカはいかにして、ここから抜け出すかを算段しているようです。
各国の思惑と異なる時間軸
アメリカ、イラン、イスラエルの当事国、日本を含むそれ以外の国々、この戦争の着地点はそれぞれ異なり、時間軸も違っています。まずアメリカの持ち時間は長くありません。ガソリンの高騰、物価上昇でトランプ氏の支持率は下がり始め、11月の中間選挙を控え、また5月上旬の米中首脳会談もあり、4月中の停戦を模索せざるを得ません。
対するイランは急ぐ必要はなく、それを逆手に取り、時間をかけて体制の整備、再構築を行い、ホルムズ海峡封鎖という最強のカードを見せながらゲームを操っているようにみえます。
また、この攻撃を始めたイスラエルも、ネタニヤフ政権の存続のためには、戦時下が長引くことはプラスに働きます。イランは「イスラエルを滅ぼす」と公言しており、この2国の戦いの収束は困難です。
他方で、中東の原油に依存する各国、世界各国は物価の高騰、経済の停滞をおそれ、こちらも早期の決着、「ホルムズ海峡の解放」を急ぎます。
つまりアメリカと世界各国は決着、出口を望み、カードはイランにある状態ですが、イスラエルがその出口を望まない理由があり、キーマンはネタニヤフ、イスラエルの意向が大きく影響していると考えられます。
トランプ氏の戦略と内政事情
中間選挙を控え支持率を意識せざる得ないトランプ氏は、4月2日の会見も世界が肩透かしを食らったよう、昨年の返り咲きから予測不可能な行動、発言を繰り返しています。果たして超大国アメリカはどこに向かうのか、トランプ氏の目標、彼を支えるホワイトハウス、そして岩盤支持層のMAGA派の意見・主張が気になります。
先週には、NATOからの脱退も言いだしたトランプ氏。国連も既に機能不全となっている今、NATOからの脱退は「戦後レジーム、戦後の国際秩序」を作りリードをしてきたアメリカが自ら破壊することになります。
トランプ氏は今年に入り、北米・中南米を米国の勢力圏とみなし、他国の介入を徹底して排除する「トランプ版モンロー主義」を打ち出しました。
これは支持基盤のMAGA派の、国際紛争よりも国境や治安など「自らの生活圏の安全」を重視する思想の影響が強いと言われています。
今回の「イランには核を持たせない」という大義は、最強の軍事力を背景に「世界の警察官」として国際秩序を主導してきた旧来のアメリカの思想には合いますが、「トランプ版モンロー主義」と相反するもので、MAGA派からは強い批判が出てきており、支持基盤に亀裂が生じ始めています。トランプ氏の拠り所であるMAGA派の価値観を損なわずに結束を保てるのか、今回の失策を隠し挽回するために、おそらく近々に「キューバへの介入」を進めることも考えられます。
新自由主義の終焉、権威国家の行方
ここ数年、世界が保守、自国第一主義の方向に移行しているのは明白で、第2次大戦後に構築された「新自由主義」は終焉。権威国家の「一方的な現状変更への試み」が頻発し、従来までの民主主義的なリーダー、国々の影響力の低下が著しいです。
現在の世界は、ごく数人、トランプと習近平、プーチン、そしてネタニヤフが、かきまわしているといっても過言ではありません。
しかし、彼らも、あと5年10年安泰で同様のことを続けられるかというと疑問符がつきます。彼らが去った後の体制に注目するべきです。
トランプ後のアメリカ?そして世界は
まずトランプは現在79才。11月に中間選挙、そして任期はあと2年半。その後の計画をどのように立てているか。
トランプ氏の後、共和党の候補は、現副大統領のJ.D.ヴァンス氏が有力で、その後にはトランプジュニアが控えているといいます。
際立った主張を持つMAGA派の力でアメリカがトランプ王朝を許すのか、それとも大きく振れた振り子は、逆方向へ揺れ戻すのか、これは非常に注目です。
また、トランプ氏と相対する習近平も72才。2018年の憲法改正で「2期10年」の任期制限を撤廃し、2027年には4期目に入ります。
現在、政敵の粛清を行い、独裁体制を固めていますが、彼の後の体制をどう築くのか。中国共産党が長く守ってきた「集団指導体制」を壊してしまったことで、その後の共産党が14億人をまとめ続けていけるのかはわかりません。
また悲願の台湾の統合を、噂通りの27年まで待てるのか、時間は多くはありません。
プ―チンも同様です。習近平と変わらぬ73才になります。
この2人の絶大な権力者が、変わらずに君臨できるのは、年齢的に最長で後5.6年と考えるのが常識です。
強力な求心力で束ねられている2つの国家、その中心が失われたとき、アメリカ同様に「振り子が逆方向へ揺れ戻す」可能性があります。
もう1つのイスラエル。
ガザ侵攻でハマスを、レバノンのヒズボラ、そしてイラン、長く中東で対立する周辺の国々や勢力を叩き続けています。現在のネタニヤフ政権は、イスラエル史上「最も右寄り」と評されています。「リクード」を中心とした右派・極右・超正統派政党による連立政権で、ネタニヤフの支持基盤は決して盤石はありません。自身への汚職の疑いもあり、政権を維持するにはより右傾化し、極右勢力の意向を強く反映せざるを得なくなっています。
同盟国アメリカも歯止めをかけることもできない状況です。
先述の3つの国の指導者には、壮大な野望がみえます。「大中華」「大ロシア帝国」「ユダヤ王国」の再建です。
歴史ある大国の目的が一気に浮きがってきているのが現状です。もちろん「ペルシャ帝国」も滅亡を望むわけはありません。
対する自由主義国家、「ミドルパワー」と言われる国々、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、そして日本などはどう動くべきか。
アメリカに揺り戻しが起きなければ、ナショナリズムを強烈に押し出して「一方的な現状変更への試み」を行う彼らを止めるのは簡単ではありません。そのためには「ミドルパワー」の国々が結集するしかないと考えます。揺らいだ国際秩序をどのように再構築していくかは、一国の力では到底無理で、小さな利害にとらわれずに「大きな視野」を共有できるかにかかっています。
世界の「不確実性」を無くすためにも、迷うことなく、一刻も早い動きが必要です。
