経済指標解説

主要な経済指標について解説します。

全般/日本/米国/海外

GDP(国内総生産)
国内で生産した物やサービスの価値の合計額を表す指数で、国の経済力の規模を表す指標として広く使用されます。GDPには名目GDPと実質GDPの2種類があり、名目GDPはその年の経済活動水準を市場価格で評価したもので、実質GDPは名目GDPから物価変動の影響を除いたものです。
経済成長率
GDPの伸び率のことで、国の経済規模が1年間にどれだけ増加したかを示します。一般的に1年間の国内総生産(GDP)の増加率で表され、経済が好調な時はパーセンテージが高くなります。
経常収支・貿易収支
経常収支とは国の間で貿易・サービスなどのやり取りした結果、それぞれの国がどれだけ利益を出したか・損失を出したかを示したもので、貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支の4つから構成されでいます。
その中の一つ貿易収支とは日本の場合、自動車や電気製品など物の輸出から、食料品や原材料など物の輸入を差し引いた金額のプラス・マイナスを示しています。これがプラス(貿易黒字)だと輸出が輸入よりも多かったことになり、マイナス(貿易赤字)だと輸出よりも輸入が多かったことになります。
政策金利
中央銀行によって決められる基準金利のことで、一般に景気が良い時は、利上げによって景気の過熱やインフレを抑制し、逆に景気が悪い時は、利下げによって市場の金利を低めに誘導してお金が個人消費や設備投資に回りやすくします。
国や地域によって政策金利の対象は異なり、日本の場合は日本銀行(日銀)の無担保コール翌日物金利を採用しています。これはコール市場(銀行などの金融機関同士で短期の資金の貸借が行われるマーケット)で、無担保で翌日には返済する超短期の資金のやり取りの金利のことです。
雇用統計
国内のある時点における労働者数や失業率についての統計で、一般に雇用情勢の変化は、個人所得や個人消費などに波及し、今後の景気動向にも大きな影響を与えます。
マネタリーベース
中央銀行が供給している通貨のことで、日本の場合、市場に流通している現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と、金融機関が日本銀行に保有している「日銀当座預金」の合計額をマネタリーベースと呼んでいます。マネタリーベースはベースマネーとも呼ばれることもあり、経済学では「ハイパワードマネー」と呼ばれることもあります。このマネタリーベースが民間銀行に供給されて、貸出しの原資となります。
マネーストック
金融部門から経済全体に供給されている「通貨の総量(お金の量)」を示す統計で、企業、個人、地方公共団体などが保有する流通通貨量の残高を集計しています。日本では現金通貨とゆうちょ銀行を除く国内銀行等に預けられた預金を合計したM2と、現金通貨に全預金取扱金融機関に預けられた預金の合計を表すM3が代表的です。
マネタリーベース統計とも関連性があり、マネタリーベースの供給量が増えると、マネーストックも増加します。以前はマネーサプライ(通貨供給量、貨幣供給量)として統計が公表されていました。
外貨準備高
政府や中央銀行が保有している外貨建て資産および金の総額で、個人や外貨準備企業など民間が所有する資産は含まれません。外国への支払いや対外債務の返済に使われるほか、為替介入を行う為の資金としても使われます。
鉱工業生産指数
鉱業と製造業(一部)が生産をしている量を指数としてまとめたもので、国全体の生産のカバー率が高く、さらに速報性が高いことから、生産活動をみる指標として、広く利用されています。例えば、鉄鋼業の鉄が生産されたり、電気機械のパソコンが生産されると指数は上昇します。
米国やユーロ圏でも鉱工業生産指数が発表されますが、対象に電力・ガスといった公共部門が含まれるなど、日本とは集計対象が若干異なります。
機械受注統計
主要機械メーカーによる生産設備用機械の受注額を集計したもので、企業の設備投資の動向を知ることが出来ます。一般には“船舶・電力除く民需”と呼ばれる指標が使われます。
消費者物価指数(CPI)
CPIとも呼ばれ、消費者が実際に購入する段階での商品・サービスの小売価格の動向を表す物価関連の指標で、生活水準を示すほか、各国・地域のインフレ動向を示す物価関連の重要な経済指標の一つです。 上限ラインを設定している国も多く、上限ラインを超えるとインフレを警戒して政策金利の引き上げが行われることもあります。
インフレ・デフレの度合いを測る場合、消費者物価指数の中でも生鮮食品の価格を除いた“コアCPI”が使われます。 (日本以外では食料及びエネルギーを除いた指数を、コアCPIと定義しています)
購買担当者指数(PMI)
企業の購買担当者に生産意欲などをアンケートし、どのような生産計画を立て、どのくらいの資材を必要としているかに基づいた指数となっています。この数字が50を超えると景気拡大を示し、50未満だと景気後退を示します。GDPと似たような動きをし、GDPを約2カ月先行すると言われています。
国際的には米サプライマネジメント協会(ISM)の公表しているPMIが有名で、最近では中国のPMI指標も注目を集めています。
BBレシオ
半導体製造装置業界などで、需給関係を表す指標として使用されます。出荷額に対する受注額の割合を示しており、一般に1.0を超えると先行きの業績拡大が見込めると判断されるのに対し、逆に下落すると悪化したと判断されます。日本半導体製造装置協会(SEAJ)の公表する、日本製半導体製造装置を算出対象としたBBレシオや、北米製の半導体製造装置を対象としたBBレシオの速報値が有名です。
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日銀短観
正式名称を“全国企業短期経済観測調査”といい、日本銀行が四半期ごとに民間企業に対して、自社の業況や経済環境の現状・先行きについてどうみているか、売上高や収益、設備投資額といった事業計画の実績・予測値など、企業活動全般にわたる項目についてアンケート調査を行います。中でも“業況判断DI”は企業決算などではわからない経営者心理を的確に表すとされ、海外でも「TANKAN」として知られています。
企業物価指数
企業間取引における商品価格変動の物価指数で、日本銀行から毎月発表されます。生産者出荷段階を中心に、企業間で取引される価格を調査しています。景気動向を判断する指標の一つとして活用されるほか、企業間で値段を定める参考指標としても活用されます。以前は「卸売物価指数」と呼ばれていました。
景気ウォッチャー指数(街角景気指数)
内閣府が毎月実施・公表する、コンビニやスーパーの店長、タクシーの運転手など景気動向に敏感な立場の人への調査をもとにした景気指数のことです。3ヶ月前と比較した景気の現状に対する“現状判断DI”と、2~3カ月先の景気の先行きに対する“先行き判断DI”があります。通常、50を超えると良い、50を下回ると悪いと考えられます。
景気動向指数
内閣府が毎月公表する、日本の景気動向を示す景気関連の経済指標です。指数には“CI”と“DI”の二つがあり、CIは景気変動の大きさやテンポについて、DIは景気の各経済部門への改善の波及度について測定することを主な目的としています。一般にCIとDIには、景気に対して先行して動く“先行指数”、ほぼ一致して動く“一致指数”、遅れて動く“遅行指数”の3つの指数があり、景気の現状把握には一致指数を、景気の先行きを予測するには一致指数に数カ月先行する先行指数を、事後的な確認には一致指数に数カ月から半年程度遅行する遅行指数が用いられます。
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FOMC(連邦公開市場委員会)
米国の金融政策を決定する会合で、日本でいうところの日銀政策委員会に相当します。ベージュブックと呼ばれる個人消費・製造業・サービス・建設・金融・物価・賃金などについてまとめた報告書を基に議論が行われ、金利・為替レートの誘導などの方針が決定されます。
ベージュブック
「地区連銀経済報告」とも呼ばれ、アメリカ合衆国の12地区の連邦準備銀行(地区連銀)がまとめた、地域の経済状況を報告する文章のことです。FOMCが開催される2週間前の水曜日にFRB(連邦準備理事会)より公表されます。12の地区連銀とは、アトランタ、ボストン、シカゴ、ミネアポリス、ニューヨーク、フィラデルフィア、セントルイス、クリーブランド、ダラス、カンザスシティー、リッチモンド、サンフランシスコの各地区連銀をいいます。
米雇用統計
米国の雇用情勢を調べた景気関連の経済指標をまとめたもので、毎月第一金曜日に米労務省が発表します。米国の雇用統計は各国の雇用統計の中でも最も注目度が高く、外国為替市場や株式市場の動きにも繋がります。
各種統計の中でも、失業率と非農業部門雇就業者数(経営者や自営業者を含まない、農業以外の産業に就いている雇用者の数)に注目が集まります。
米国新規失業保険申請者件数
米国内で失業した人が初めて失業保険を申請した件数で、毎週木曜日に発表されています。一般的に40万人を上回ると、雇用状況が悪化する可能性があると言われています。雇用統計(失業率)の先行指標としても使われますが、祝祭日や天候といった季節要因で数字のブレが出てくるので注意が必要です。
ADP雇用統計
米国の民間会社ADP社(Automatic Data Processing:オートマティック・データ・プロセッシング社)が算出している雇用関係の指標で、米国の企業約50万社を対象に雇用者数調査を行い、毎月公表しています。米国雇用統計の2営業日前に発表されることから、雇用統計の方向性を探る指標としても使われており、非農業部門雇用者数の事前予想値と比べて、上回っていればポジティブ、下回っていればネガティブと受け止められます。
米小売売上高
米国商務省が発表する、小売・サービス業の月間売上高についての景気関連の経済指標です。一般に、前月比で増加すると個人消費は堅調、逆に減少すると個人消費が落ち込んでいると判断されます。また、年末のクリスマス商戦の結果を確認する材料として、1月に発表される数値には注目が集まります。米国では個人消費がGDPの約7割を占めることから、米国の個人消費の動向を知る上で注目されるほか、米国の景気の良し悪しを占う上でも重要視されています。
米ISM製造業景気指数・米ISM非製造業景気指数
米国供給管理協会(ISM)が発表する、企業の購買担当役員へのアンケート結果を元にした企業の景況感を示す経済指標で、PMIの一つです。米国の主要指標の中で最も早く発表されること、企業の景況感を反映した景気転換の先行指標とされていることから、注目度はかなり高くなっています。
シカゴ購買部協会景気指数
米国のシカゴ購買部協会が毎月発表する、製造業の景況感を示す指数です。ISM製造業景況感指数、フィラデルフィア連銀、ニューヨーク連銀製造業景況感指数などと比べると重要度は低いですが、ISM製造行景況感指数の前日に発表されるので、先行指標として参考にされます。
米住宅着工件数・米建設許可件数
米住宅着工件数とは米国内で着工された新設住宅(一戸建てと集合住宅が対象で、公共住宅は含まれず)の件数で、景気動向の先行指標として注目されます。米建設許可件数は自治体などに申請された建設申請の許可数で、月末時点で未着工の件数も含まれます。住宅投資が活発化すると、家具・電気製品等への波及投資も生じるため、景気動向と密接な関連性があります。
米NAHB住宅市場指数
全米住宅建設業者協会が毎月発表する、米国の不動産業者の景況感を示す経済指標です。米国の住宅市場の動向を示すものであり、今後6カ月の住宅販売の予測アンケートの結果をもとに、50を上回れば住宅市場に明るい見通し、50を下回れば住宅市場に暗い見通しとなります。
S&Pケース・シラー住宅価格指数
格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が発表している米国の住宅価格の水準を示す指数で、住宅価格は個人消費に大きな影響を与えるため、米国の景気指標としても重視されています。四半期に一度公表される全米住宅価格指数、毎月公表される主要10大都市圏指数・主要20大都市圏指数があります。
フィラデルフィア連銀指数
米国のフィラデルフィア連銀が発表する、製造業の景況感や経済活動を示す景気関連指数です。非農業部門の就業者数、失業率、製造業の新規受注などの項目を集計しています。指数がプラスだと景況感が良く、マイナスになると景況感が悪くなっていることを示します。
ニューヨーク連銀指数
米国のニューヨーク連銀が発表する、仕入価格・販売価格・新規受注・出荷・在庫水準などの各項目について調査して集計した指数です。米国の製造業関連指標であるニューヨーク連銀指数・フィラデルフィア連銀指数・米ISM製造業景気指数は、それぞれ関連性が高いです。
リッチモンド連銀製造業指数
米国のリッチモンド連銀が発表する、バージニア州やノースカロライナ州などの製造業における景況感を示す経済指標です。リッチモンド連銀の管轄地域は、米国内総生産の約9.1%を占めています。
消費者信頼感指数
米国の民間経済研究所であるコンファレンスボード(全米産業審議会)が毎月発表している、消費者マインドを指数化した経済指標です。経済や雇用について、現状と6カ月後の景況感のアンケート行って調査されます。個人消費やGDPとの相関性が強いと言われており、それらの指数に対して半年程度の先行性を持つとも言われています。
ミシガン大学消費者信頼感指数
米国のミシガン大学のサーベイ・リサーチセンターが実施する消費者マインドに関するアンケート結果を集計した景気関連の経済指標で、調査は電話によるアンケートで行われています。景況感・雇用状況・所得に関して、楽観または悲観で回答されます。米国の消費者マインドを推測する代表的な指数の一つで、個人消費との連動性が高く、景気動向を判断する際に活用されます。
生産者物価指数(PPI)
米国や欧州で発表される、生産者が出荷した完成品や原材料の価格変動を表わす指数です。業種や品目、製造段階別で指数が公表されますが、中でも季節要因で変動しやすい食品やエネルギーを除いたコア指数が注目されます。PPIが上昇すると、消費者が購入する物価も上昇するので、インフレ率を計る目安にもなります。日本の「企業物価指数」に近い統計です。
米耐久財受注
製造業企業の耐久財の受注状況を表した景気関連の経済指標で、自動車・航空機・家電製品・家具などの3年以上の使用に耐えうる消費財(=耐久財)の受注額が、毎月米国商務省から発表されます。米国の設備投資に対する先行指標として注目されています。
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ECB理事会(欧州中央銀行理事会)
日本の日銀政策決定会合や、米国のFOMCと同様に、ユーロ圏の金融政策を担うECB(欧州中央銀行)の意思決定機関で、政策金利の見直しや金融市場の安定策などが話し合われます。
IFO景況感指数
ドイツにある製造業、建設業、卸売・小売り業など7,000社の企業に対して、日本の日銀短観と同様にドイツ経済の現況と先行きのアンケート調査を行った結果に基づく指数です。ドイツ経済の先行きを示すだけでなく、ドイツは欧州最大の経済国であることから、ユーロ相場にも影響を与えると言われます。
ZEW景況感指数
ドイツの景況感についての調査結果を指数化したもので、ドイツの民間調査会社が発表しています。一般にZEW景況感指数は、IFO景況感指数先行性があるとされており、ユーロ圏の景況感指標としてはIFO景況感指数に次いで注目度が高く、ECB(欧州中央銀行)の金融政策やユーロ相場にも大きく影響を与えると言われています。
Wp先行指数
Wp先行指数(ウエストパック先行指数)とは、オーストラリアの市中銀行であるウエストパック銀行が発表する、オーストラリア国内の景気を表す指数です。予想より高い発表値はポジティブとなり、予想より低い発表値はネガティブとなります。
NAB企業景況感指数
オーストラリアの市中銀行であるナショナル・オーストラリア銀行が発表する経済指標で、オーストラリア国内企業400社以上を調査し、今後の景況感の動向を集計した指数です。
AiGサービス業指数・建設業指数
オーストラリア産業グループ(AiG)が発表する経済指標です。公表値が予想より高いとポジティブに、予想よりも低いとネガティブに受け止められます。
Ivey購買部協会指数
カナダ購買部協会が毎月発表する経済指標で、カナダ国内の企業を対象としたPMI(購買担当者指数)です。50を超えればカナダ国内の景気拡大、下回ればカナダ国内の景気後退を示すとされています。
中国HSBC製造業購買担当者指数
英HSBCホールディングスが発表している購買担当者指数(PMI)で、速報値は420社余りのメーカーの購買担当者の回答に基づき発表されます。また、中国国家統計局と中国物流購買連合会も製造業PMIを発表しています。
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