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証券新報 2017号

昨年12月に工事安全祈願式が行われ着工の運びとなった東京(品川)-名古屋間の「リニア中央新幹線」の工事が本格的に開始された。国内で“リニアモーターカー“の研究が始まったのが1962年というから、半世紀以上かかってようやくの高速鉄道での実用化と言える。「リニア中央新幹線」は超伝導リニア(超電導磁気浮上方式)という車両に搭載した超電導磁石と地上に取り付けられたコイルとの間の磁力により浮上して走行する技術を用いた車両で東京から大阪を結ぶ新たな新幹線で、工事が開始された品川-名古屋間は2027年開業予定となっている。(名古屋-大阪間は2045年開業予定)。東京から大阪までの建設費は車両含め約9兆円となる見込みだ。品川-名古屋間ルートは途中に神奈川県・山梨県・長野県・岐阜県に駅が設置予定(名古屋-大阪間のルートは未確定)で、検討時は南アルプスを北に向かって迂回するルートなどの案もあったが、ほぼ真っ直ぐ南アルプスをトンネルで貫く最短距離のルートで決定された。また、最高時速500km以上のスピードが出るリニア(新幹線は最高時速300kmほど)が走ることにより、品川から名古屋まで最短40分、最終的には東京から大阪までを約1時間で結び、現在の新幹線(のぞみ)の半分程度の移動時間を実現する計画となっている。リニア中央新幹線のルートは前述の南アルプスも含めトンネルが多く、また都市部でも公共利用の場合は地権者の事前補償を要しない“大深度地下”の適用を受けた地下トンネルを利用するため、品川-名古屋間では86%がトンネル内となるので、車窓からの眺めを楽しむには少し寂しいかもしれない。経済効果については交通政策審議会の分析によると、東京-大阪間の開業時点で移動時間短縮による利便性向上等を貨幣換算した“便益”が年7,100億円、効率化によるコスト低下や世帯・旅行関連財の消費拡大により生産額が全国で年8,700億円増加すると推計されている。経済効果もさることながら、リニア中央新幹線には、東海道新幹線とともに東京-名古屋-大阪間の大動脈路線の二重化を図るという目的もある。地震などの災害に備えるとともに、開業から50年が経過する東海道新幹線の経年劣化による一部区間ストップしての改修があった場合等のバイパスとしての役目などが想定されている。だが、トンネル工事等による地下水や環境への影響を懸念する声もあるほか、品川-名古屋間から18年後の開業予定となってしまっている大阪府および関西財界が協議会を立ち上げ全線開通の前倒しを求めていたり、名古屋-大阪ルート間の中間駅の位置などがまだはっきりしていないため誘致合戦が続いているなど、これから乗り越えなくてはならない課題も多いようである。長らく未来の乗り物と思われていたリニア新幹線がいよいよ現実のものとなっていく今後の動向が注目されるものと思われる。“未来の乗り物”から現実へ「リニア中央新幹線」02