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証券新報 2016号

「4Dプリンター」“動き”までプリントする技術02プログラミングされた設計図に従って材料の層を重ね上げ、立体物を造形することができる「3Dプリンター」が近年高性能化したことにより、様々な分野で活用されている。例えば製造業では、これまで金型加工などが必要だった開発時の試作が3Dプリンターで行えるようになったため、従来開発にかかっていた時間・コストの削減が可能になってきた。また医療分野では、人工骨・義手などの作成だけでなく、CTスキャンで取得したデータから作成した患者の立体臓器モデルによる手術前のシミュレーションなど、期待される用途は幅広い。このように3Dプリンターの用途開発が進んでいる最中であるが、早くもその先を行く「4Dプリンター」なるものの研究が始まっている。4次元空間を作り出そうというような話ではない。「4Dプリンティング」とは簡単に言えば3Dプリンターで立体物を造形する段階で、“動き・変化”などの情報も素材自体にプログラムしようとする技術である(材料の組み合わせやプリント技術の工夫による)。従来の3Dプリンティングで作られる固定物に、動きという“時間軸”の次元を加えるので4Dと言われている。ややこしいが、4Dプリンティングのできる3Dプリンターが「4Dプリンター」である。4Dプリンティングの概念を提唱した米国マサチューセッツ工科大学のスカイラー・ティビッツ氏が立ち上げた研究室Self Assembly Labのデモンストレーション映像では、4Dプリンティングで作られた造形物が水に触れるだけで動力なしに自ら動き出す様子を見ることができる。一直線の棒が四角いフレーム状に変形したり、展開されていた箱が勝手に折りたたまるといったものだ。同研究室はすでに、天候に応じて形を変形する自動車のリアウィングや、自在に伸縮して水流を制御するパイプなどの開発を企業と共同で試みている。また、素材が動くきっかけ(エネルギー)には、水だけでなく熱・光・振動など、環境から受ける様々なものが考えられており、材料も多様なものが利用可能といわれている。作成した立体物が目的通りの動きをするかシミュレーションするソフトも開発されている。この技術が発達すれば、例えば平らな状態で運搬でき建設現場で封を開けると自ら立体的な形状に変形する建築材や、普段はコンパクトな形状に収まっていて特定の刺激を与えると組み上がる家具など、これまでになかった素材・製品の開発が可能になると考えられる。また、動力や大きなエネルギーを要さず動く特性から宇宙開発分野での活躍も期待できるほか、ロボットや再生医療分野における人工筋肉のような素材へ活用される可能性もある。4Dプリンターが作る「自分で動く素材」が、今後どのように実用化されていくのか注視してみるのも面白いのではないだろうか。