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証券新報 2014号

モノがネットと繋がると何が起こる?「IoT」02最近目にすることが多くなってきたキーワード「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」とは、従来インターネット(ネット)へ接続されていたパソコン・スマートフォンなどのデジタル通信機器とは異なる様々な「モノ(物)」にネットを接続して利用する技術のことであるが、日本語訳も漠然としていてイメージが掴みづらいと思っている人も多いのではないだろうか。IoTの分かりやすい例として「スマートロック」を挙げる。外出先で玄関の施錠をしたかはっきり思い出せないとモヤモヤとした気持ちで過ごすことになるものであるが、「玄関の鍵」がネットに繋がったスマートロックなら施錠の確認や開閉をスマートフォン(スマホ)で遠隔から行うことが可能である。 このように、既存の「モノ」がネットに繋がると、かゆい所に手が届く新たな付加価値が生まれる。これがIoTの特徴の一つと言える。家電製品においても、エアコンや照明のON・OFF、テレビの録画予約などをスマホから操作できるようにネットで繋がった商品が登場し始めている。近年導入に向けて動きが加速しつつある「スマートハウス(太陽光発電と省エネで電力の自給自足を目指す住宅)」も、効率的な電力消費のために冷蔵庫から炊飯器まで、あらゆる家電がネットワークに繋がり稼働時間帯・消費電力量チェックや制御が行われる構想となっている。IoTにより、既存のモノから新たなサービスが創り出されることもある。電気湯沸しポットをネットに繋ぎ、離れて暮らす高齢者の安否をポットの利用状況で知らせるサービスを知っている人は多いだろう。電気ポット(モノ)がネットに繋がることで「見守る」サービスが生まれた。実はこのサービスが開始されたのは15年近く前のことで、モノがネットと繋がるという発想自体はそれほど目新しいものではないことが伺える。だが現在では、モノを制御するための端末として気軽に持ち歩けるスマホの存在や、屋外でもネットに繋がる無線ネット回線の充実などにより「モノがネットと繋がってできること」の範囲は飛躍的に広がった。今後、IoTによる革新的なサービスの開発は加速度的に進む可能性がある。データの収集にもIoTは欠かせない。近年、自動販売機もネットに繋がっているものがあるのをご存知だろうか。オンラインにすることで在庫のリアルタイム管理はもとより、売れ筋商品などのデータ取得・分析が可能となる。国内鉄道の自動販売機事業を行う子会社では、収集したデータ(鉄道子会社なのでIC乗車券での決済による属性情報も得られた)を基にして商品開発やラインナップの最適化を行い、一定の成果を上げていると言われている。メーカーの製品サポートの形も大きく変わる可能性がある。現在の家電製品や自動車などは多くの部分がソフトウェアによって制御されている。ネットに繋がった製品であればソフトウェア部分の不具合修正がオンラインで可能なので、工場や販売店で対応する場合に比べ人件費を大幅に削減できる。すでに電気自動車メーカーで、ネットに繋がったモデルの車においてプラグを制御するソフトウェア不具合の3万台近い大規模リコール対応がオンラインにより実施された事例もある。IoTにおける課題の一つに「規格の標準化」が挙げられる。現在IoTにおける規格は定まっておらず、例えば家電ではメーカーごとに操作するアプリケーション(アプリ)も、通信規格もバラバラの状態である。このため、各業界で規格の標準化を目指す団体が複数設立されている。自社の採用する技術を標準規格化することができればIoT市場において大きな主導権を握ることができると目され、今後、標準規格の獲得競争は激化していくものと思われる。もう一つの課題は「セキュリティ」である。モノは当然モノとして機能しなくてはならないので、ネット接続に関するセキュリティ機能に十分なリソースを割けない場合も多い。すでに、ネット接続した防犯カメラへの不正アクセスなどの例もあり、今後の各業界の対応が注視される。具体例を見てお分かりのように「IoT」は我々の身近なところで着実に浸透しつつあり、今後、様々な業界を巻き込みながら市場規模はさらに拡大するものと思われる。意外なモノがネットに繋がることで誕生する新しい商品・サービスや、上記課題のクリアなどを含め、注目のキーワードと言えるのではないだろうか。