ブックタイトル証券新報 2011号
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証券新報 2011号
「再生医療」法改正により実用化加速の期待02京都大学教授の山中伸弥氏が2012年にノーベル賞を受賞したことにより「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」の名を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。皮膚などの体細胞に特定の遺伝子を導入し培養することによって様々な組織や臓器の細胞に分化でき、ほぼ無限に増殖することができる細胞に変化させたものがiPS細胞である。これまで同様の用途で研究されてきた「ES細胞(胚性幹細胞)」は、受精卵を壊して作成されるため倫理面等に課題があった。一方、iPS細胞は患者自身の細胞から培養することができ、分化した組織を移植した場合も他者からの臓器移植等と異なり拒否反応が起こらないと考えられ、病気や怪我で失われた人体の組織・機能を再建・回復させる「再生医療」の可能性を広げている。近年政府も再生医療に注目しており、昨年11月に薬事法が改正された。改正では「医薬品」「医療機器」に加え「再生医療等製品」の項目を新たに定義し、有効性が推定され安全性が認められれば条件・期限付きで特別に再生医療等製品の早期承認が可能になる仕組みも盛り込まれた。ノーベル賞を受賞するほど研究が他国をリードしているのだから、日本の再生医療は進んでいるのだろうと思うかもしれない。しかし残念ながら「実用化」の面では遅れを取っているのが現状で、2013年2月時点のデータによると米国で11品目・韓国で17品目が再生医療関連の製品として承認されているのに対し、日本では今回の法改正時点で既存の2品目が承認となったにすぎない。改正前の薬事法は均質な工業製品としての医薬品・医療機器を前提としていたため、承認までには多くの治験を実施しなければならずコストと時間がかかり、特に患者自身の細胞を培養するなど個体差が大きく品質が不均一となる再生医療のための製品が承認されるには大きな壁となっていた。前述の国内で承認されている2品目も患者自身の細胞を培養する(自家培養)表皮と軟骨であるが、治験前の申請から数えると承認まで実に10年ほどかかっている。こうした環境を改善すべく「再生医療等製品」について均質にならない等の特性を踏まえた承認制度が設けられたのである。これにより国内での再生医療にかかる製品の実用化が迅速に進むようになるのではないかと期待が集まっている。iPS細胞を含む再生医療の最新技術の多くはまだ研究・臨床段階であり、上記のように日本での実用化進展もこれからという印象であるが、今回の法改正により製薬・バイオに留まらず細胞培養装置等の機械関連を含め国内企業が再生医療分野へ進出するニュースが増えてきている。また、海外の同分野の企業も、短期で承認が得られる可能性のある日本に興味を示している模様である。今後、日本での再生医療分野におけるビジネスチャンスを狙う各企業の動向が注目されるものと思われる。