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証券新報 2009号

情報・通信技術(ICT)の中で近年注目される「ウェアラブル端末」とは、身に着けることができる形状をしたコンピューターおよび周辺機器のことである。腕時計型やグローブ型など様々な形状のタイプが登場しているが、今回はその中でも「メガネ型端末」にフォーカスする。「メガネ型端末」は文字通りメガネ状にかけて使用する端末で、正面の視界を確保した状態で利用者の視野に業務に必要なデータやインターネットなどの情報を表示するタイプのものである。メガネで言うレンズに当たる部分にディスプレイがあり、透過型タイプの場合、使用者には情報があたかも空中に投影されているかのように見える。カメラを搭載したタイプでは録画機能だけでなく、業務において遠隔地の作業者と視界を共有してサポートを行うといった活用方法もあり、また利用者が見ているものを認識して情報を返す(顔認識等)技術なども研究されている。メガネ型は、ハンズフリー(両手が自由な状態)で情報を確認することができるため、様々な作業の効率向上が期待できる。このメリットを生かすため、音声認識やジェスチャーで端末へ指示ができるように開発されているものもある。国内の一部の病院では、手術の準備に必要な医療材料の取り揃え作業にメガネ型端末を用いている。必要な材料の保管場所・パッケージの写真などを確認しながら迷わず作業が行え、業務が軽減されているという。上記のように目的の限られた業務用での導入事例はすでにあるが、一般向け商品としてのメガネ型端末は残念ながらまだ普及していない。商品化を目指し、ここ数年いくつかのメーカーからアプリケーション開発者向けの端末販売が行われており、様々なアイデアのアプリケーションが発表されている。例えば、ゴルフ向けにGPSを使用して測定したホールまでの距離やスコアをメガネに表示するものや、自動車運転中にドライバーの居眠りをメガネのセンサーで検知すると警告を行い、最寄りの休憩所までナビゲートしてくれるものなどがある。今後一般向け商品として普及するためには、魅力的なアプリケーションの登場が欠かせない。また、携帯電話が登場した当初に電車内でのマナー等が取りざたされたように、新しいタイプの端末には利用に関するルールが確立するまで様々な議論が起こる。メガネ型端末は使用者が何をしているのか周囲から分かりづらいという点があり、特にカメラ付きの場合は撮影禁止の場所での使用や公共の場での他者のプライバシーについての配慮が(使用者にも・端末自体の機能としても)求められる。米国では早くも飲食店やカジノなどでメガネ型端末の店内使用を禁止する動きが出始めているほか、ウェストバージニア州では危険とみなし自動車運転中の使用を禁止する法案が提出されている。メガネ型端末は、業務用ではハンズフリーのメリットにより様々な業種で利用が広がっていくものと考えられるが、一般向け商品としての普及に関してはまだ乗り越えなくてはならない課題が多いようである。だが、課題をクリアすることができた場合、ノートパソコンからキーボードを取り払ったタブレット端末や、そこから派生したスマートフォンが登場以降あっという間に広まったように、近い将来、メガネ型端末を街中で使う人々の姿が珍しくない光景になっている可能性もある。身に着けるコンピューター「ウェアラブル端末」メガネ型の将来はいかに02