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証券新報 2007号

イギリスのISA(アイサ:個人貯蓄口座)という制度を参考に、日本でNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まって今年で2年目である。参考にしたとはいえ、NISAはイギリスの制度と全く同じというわけではない。例えばNISAは毎年の「投資額」に上限が設けられている(現行100万円)ため、一度NISAで購入した株・投資信託を売却してもその年の非課税投資枠は回復しないのに対し、イギリスの制度は毎年の「拠出額」に上限が設けられているので一度ISAで投資した金融商品の売却代金で別の金融商品へ新たに非課税投資すること(スイッチング)が可能となっている。またISAは恒久化されており、毎年の拠出上限額が消費者物価指数(CPI)に連動して変動しインフレに対応できる工夫もされている。日本のNISAは現在時限措置という位置付けで、新規に投資できるのが2023年までとなっており最後の投資枠の非課税期間5年間を含めると2027年までの制度であるが、恒久化も検討される中、より使いやすい制度になるよう変更が行われている。今年からNISAを利用する金融機関を毎年変更することが可能になったが、来年2016年のNISA制度変更の主なポイントは「投資上限額の引き上げ」と「ジュニアNISAの創設」である。◇投資上限額の引き上げNISA非課税投資枠の上限額が現行の100万円から120万円に引き上げられる。合計額は上がるが、「10万円×12ヶ月」という投資が可能となるので少額から積立てる投資をイメージしやすくなり、本来NISAがターゲットとしている若年層へのアピールが可能になると考えられる。ちなみにイギリスISAは積立サービス等が利用しやすいよう拠出上限額が12で割りきれる金額で決定される。◇ジュニアNISAの創設0歳から19歳までの未成年者専用の「ジュニアNISA」口座の開設が可能となる。非課税となる投資上限額は毎年80万円で各投資枠の非課税期間は5年間である。資金は親・祖父母等からの拠出が想定されており、口座の管理・運用は原則親権者等が未成年者のために代理して行う。ジュニアNISAに利用した資産は原則子供が18歳になるまで途中で払い出しすることができない。子供が20歳になるとジュニアNISA口座は通常の成人用NISA口座へ移行するが、NISA制度自体が現行のままだと2027年で終了してしまうので、その段階で子供が成人していない場合、ジュニアNISAの資産は子供が20歳になるまで非課税で保有可能(新規投資不可)な継続管理勘定に移管することができる予定となっている。注意点としては、親・祖父母からのジュニアNISAへの拠出について贈与税の特例はないため、ジュニアNISAの80万円を含めて年間110万円を超える贈与を行うと贈与税が課税されることや、非課税対象の商品は成人用NISAと同じで元本割れリスクがあるため、運用に失敗するとせっかく子供・孫のために拠出した資金が目減りしてしまうことなどが挙げられる。また、仮に来年からジュニアNISAを毎年新規資金で80万円利用すると(現行ではあと8年分NISAで投資できる)元本だけで最大640万円、運用がうまくいけばそれ以上の資産が子供名義の口座で保有されることになる。18歳までの払い出し制限など大学進学費用等を意識した制度という意味合いもあるが、自分名義で運用されている多額の贈与資産の存在を子供が知るタイミングには慎重な配慮が必要と思われ、子供の将来を考え事前に親権者・拠出者達で検討しておく必要があると考えられる。もちろん、子供が20歳になれば名義人である子供本人が自分の意志で口座・資産の管理をすることになる。イギリスではISAを国民の約4割が使用しており、2011年から始まったジュニアISAは2013年中には約30万口座が利用された。制約が少なくシンプルに制度がまとめられていることが英国居住者に評価されていると言われている。ただ、ISAも当初は日本のNISA同様に時限措置であったし、何度も制度変更を行って今の姿になった経緯がある。昨年来、日本で始まったNISA制度の解りにくさに困惑した利用者は多いと思われるが、今後NISAをより使いやすく洗練させていくことができるかどうかが、イギリス同様に日本にNISAを根付かせ投資家層の拡大を図れるかの鍵になると思われる。※本項は来年からのNISA制度の変更点等をご紹介するためのもので、ジュニアNISA等の当社での取扱については未定となっております。取扱・お申込方法等が決まりましたら追ってご案内いたします。2016年のNISA制度変更「投資上限額引き上げ」と「ジュニアNISA」02