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証券新報 1979号

平成26年3月1日発行1月の貿易赤字が過去最大に財務省が発表した貿易統計(通関ベース)によると、1月の貿易収支(輸出額-輸入額)が2兆7899億円の赤字となり、月間ベースでは比較可能な1979年以降で最大の赤字額となった。1月は例年、正月休みなどの影響で輸出が減少し、貿易収支が悪化する傾向があるが、こうした影響を考慮しても過去最大の赤字額であることに変わりはなく、貿易収支の赤字体質は当面続くとの見方が広がっている。1月の赤字額が膨らんだ最大の要因は、引き続き原子力発電所の停止に伴う火力発電用燃料の増加で、数量の増加に円安の影響が加わって輸入額が増加している。また、消費増税前の駆け込み需要に対応するための電子部品などの輸入が増加、貿易収支の悪化に寄与している。一方、輸出については米国への自動車輸出が好調に推移したため、対米貿易収支が黒字となったものの、春節の影響などでアジア向けの輸出が落ち込んだ影響から対アジアの貿易収支が赤字となるなど、円安にもかかわらず、輸出の伸びが鈍い状況となっている。円安は本来、日本製品の価格競争力が高まることで輸出数量が伸びる効果をもたらすことになるが、一昨年までの円高局面で製造拠点の海外移転が進んだ影響などから円安でも輸出数量が伸びにくい構造となっており、貿易赤字が続くとの見方につながっている。今後の注目点としては、3月までは消費増税前の駆け込み需要もあって日本の内需が堅調に推移し、輸入が高水準で推移すると見込まれている一方、増税後は内需が一時的に落ち込むことが想定され、海外景気が持ち直せば貿易収支が改善する可能性が出てくる点が挙げられるものと思われる。貿易収支の悪化を背景に経常収支も赤字体質となりつつあり、こうした体質が定着すると、財政赤字のファイナンスを海外の資金に頼る構造に陥る懸念がある。貿易収支の改善に向けて政府がどのような対応を打ち出すかが注目されるものと思われる。2貿易収支(通関ベースで単位は億円、出所は財務省)