ブックタイトル証券新報 1976号
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証券新報 1976号
5単一通貨ユーロのデメリットからメリットへ注目2010年ギリシャから始まった欧州債務危機において、欧州各国では歳入の減少により厳しいEUの財政規律のもとで歳出削減を迫られました。本来、歳出削減によるデフレ圧力に対しては景気刺激のための金融緩和策を取りますが単一通貨ユーロの導入国は独自の金融政策が取れません。また、単一通貨ユーロ導入国は自国通貨安による輸出産業の回復というメカニズムも働きません。100年に一度あるかないかと言われる金融危機が世界の需要を一瞬にして吹き飛ばしたことが引き金となり、政府の歳入が激減した結果、マーケット参加者により単一通貨ユーロのデメリット部分が強調されたものと思われます。マーケットはギリシャのユーロからの離脱や単一通貨ユーロ自体の崩壊までも想定した動きとなり、EU加盟国に対する財政規律遵守の縛りも本来ならば財政健全化に向けプラス材料ですが一段の需要不足を招くというEU加盟国のデメリット部分がさらに強調されていました。本来、単一通貨ユーロはユーロ圏を人・物・金が自由に移動できるようになるためユーロ圏経済が活性化するメリットがあります。具体的には、ユーロ圏内で通貨の両替コストが無くなるため、豊富な観光資源を持つユーロ圏内での旅行が活発化したり、ユーロ圏内での物流コストが激減したり、ユーロ圏内での有価証券投資や不動産投資が容易になる等メリットはたくさんあります。いよいよ米国の金融緩和縮小が始まり、先進国の需要の回復により欧州債務危機も終焉に向かい始め、単一通貨ユーロのデメリットからメリットに目を向ける時期がきたと思われます。すでに、2010年に金融支援を受けたアイルランドは2013年12月15日に金融支援を終了し、2009年に金融支援を受けたラトビアも金融支援を終了し2014年1月から単一通貨ユーロの導入となりました。また2010年金融支援を受けたギリシャも2013年に基礎的財政収支の黒字化が見込まれ、PIGSの大国であるスペインやイタリアも2013年に第3四半期に前期比プラス成長となってきています。EU加盟国で単一通貨ユーロの導入を行っていない国については、EUによる財政規律遵守の縛りがあるものの独自の金融緩和策と自国通貨安により優位な国際競争力でリセッションに陥ることなく成長を続けています。今後主要国が回復に向かうと思われるなか、再び、製造業の生産拠点として依然生産コストが低く、関税が掛からないEU加盟国である中東欧諸国の需要増加が期待できるものと思われます。また、金融危機で単一通貨ユーロの導入を見送ったEU加盟国も再び単一通貨ユーロの導入を検討することも予想されます。その際、十分に導入の条件を満たしていないEU加盟国は単一通貨ユーロ導入の厳しい条件へ向けて努力するものと思われ、かつ、それらの国は経済の基礎的条件の改善の変化率の高まることが予想され、再びそれらの国に投資資金が集まることが期待されます。20140109